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制度の見取り図:薬価基準・公定価格とルールの所在

日本の公的医療保険では、保険が使える医薬品の名前と価格が国(厚生労働大臣)によって告示されています。 このリストが薬価基準です。

薬価基準の二つの顔

薬価基準 = 厚生労働大臣が告示する1つのリスト。これが二つの役割を兼ねている

① 品目表として

保険診療で使ってよい医薬品の一覧

ここに載っていない医薬品は、原則として保険診療では使えません。収載されて初めて、実質的に市場に出られます。 海外で承認された薬が日本では開発されないドラッグ・ロスや、収載されていても供給が止まる問題は 現在の論点にまとめています。

② 価格表として

保険から支払われる償還価格

その医薬品を使ったときに医療機関・薬局へ支払われる額です。患者はこの価格に自己負担割合を掛けた額を払います。 決め方は新薬以降の各ページで扱います。

公定価格と、実際の流通価格

薬価は1つですが、実際の取引価格は受け渡しのたびに別の値段がつきます。 モノは左から右へ、お金は右から左へ流れ、その途中で名前の違う3つの価格が現れます。

医薬品とお金は逆向きに流れる
医薬品とお金の流れ 医薬品は製薬企業から医薬品卸、医療機関・薬局、患者へと流れる。お金は逆向きに流れ、患者と保険者が医療機関・薬局へ薬価を支払い、医療機関・薬局は卸へ納入価を、卸は製薬企業へ仕切価を支払う。薬価と納入価の差が薬価差益として医療機関・薬局に残る。 医薬品の流れ → ← お金の流れ 製薬企業 製造・供給 医薬品卸 価格交渉・流通 医療機関・薬局 仕入れて患者へ 患者・保険者 窓口負担・保険料・公費 医薬品 医薬品 医薬品 仕切価 納入価 薬価 薬価 − 納入価 = 薬価差益 医療機関・薬局に残る

薬価は保険から医療機関・薬局へ支払われる公定価格、納入価は卸が医療機関・薬局へ納める価格、 仕切価は製薬企業が卸へ渡す価格です。薬価調査が把握するのは納入価で、これが次の改定の材料になります。

薬価は「上限価格」であると同時に「償還価格」です。医療機関・薬局は卸から自由な価格で購入できますが、 保険から受け取るのは薬価に基づく額です。つまり 薬価 − 実際の仕入価格(納入価)= 薬価差益 が生じ、 この構造が毎年度の実勢価改定の出発点になります。

この図で右から左へ流れるお金は、そのまま医療機関・薬局・卸・製薬企業の収入です。 薬価を下げれば患者と保険の負担は軽くなり、同時に各社の収入も減ります。

厳密にいえば、請求されるのは薬価そのものではなく点数です。薬剤料は所定単位あたり15円以下なら1点、 15円を超えるときは、超えた分の10円又はその端数ごとに1点を足します(1点=10円)。ここで丸めが入ります。 本サイトでは以降、この丸めを省いて薬価のまま説明します。

収載の単位とタイミング

薬価は、保険医療機関・保険薬局が医薬品の支給に要する単位(薬価算定単位。1錠、1g、1瓶など)あたりの 平均的な費用の額として、品目ごとに定められます。 組成・剤形・規格・製造販売業者のすべてが同じものが1つの品目で、価格は銘柄ごとに付くのが原則です。 ただし、日本薬局方収載医薬品や生薬などで、製造販売業者ごとに別の薬価を定める必要が乏しいと認められるものは、 まとめて1つの品目として扱われます(統一名収載)。

薬価収載とは薬価に係る厚生労働大臣告示を定めること、薬価改定とは 薬価調査の結果に基づいてその告示を全面的に見直すことをいいます。収載の時期は、品目の種類によって異なります。

投与形態と剤形区分(別表1)
投与形態区分主な剤形
内用薬内−1〜内−5錠剤・カプセル剤/散剤・顆粒剤/液剤・シロップ剤(成人用)/同(小児用)/チュアブル・舌下錠
注射薬注−1・注−2注射剤(キット製品でないもの)/注射剤(キット製品)
外用薬外−1〜外−9軟膏・クリーム剤/吸入剤/眼科用剤/耳鼻科用剤/貼付剤/坐剤・膣剤/注腸剤/口嗽剤・トローチ剤/各区分のキット製品

剤形区分は、類似薬効比較方式で比較薬を選ぶときや、 規格間調整の単位として使われます。 組成・規格が同一でも、製剤の工夫により効能・効果や用法・用量が明らかに異なる場合は、別の剤形区分とみなされます。

薬価基準収載の時期
区分収載の時期
新医薬品承認から原則60日以内、遅くとも90日以内。収載の機会は年7回(2025年に年4回から増加)
報告品目・新キット製品5月・11月を標準(報告品目とは、医薬品部会の報告品目・審議品目のうち新医薬品以外のもの)
後発医薬品6月・12月を標準

年7回になるのは、承認が薬事審議会の部会の開催から3週間以内を目処に行われ、 収載がその承認から60日以内だからです。 出典:事務連絡「医療用医薬品の薬価基準収載等に係る取扱いについて」(令和8年2月13日 厚生労働省保険局医療課)、 「新医薬品の承認時期について」(令和8年1月13日 医薬薬審発0113第2号)。

薬価算定の基準

薬価の決め方は、厚生労働省保険局長通知「薬価算定の基準について」に定められています。 中医協の了解を経て、薬価改定に合わせて見直されます。毎年度の改定になってからは中間年にも改正されており、前の版は令和7年2月19日付け 保発0219第1号でした。 現行版は令和8年2月13日付け 保発0213第3号で、令和8年4月1日以降の薬価収載・薬価改定に適用されます。

同じ品目に複数のルールが重なることがあります。長期収載品が再算定も受ければ、 第4節で下げた額に第5節が乗ります。第3章はこの順序も定めています。

  1. 第1章定義 全36項目。薬価、一日薬価、剤形区分、類似薬、比較薬、各算定方式、補正加算の各類型 ほか
  2. 第2章新規収載品の薬価算定 第1部 新薬(類似薬がある場合/ない場合)、第2部 新規後発品、第3部 算定の特例
  3. 第3章既収載品の薬価の改定 全12節。改定前の薬価に、次の第1節から第12節までを順に適用する
    1. 第1節市場実勢価格加重平均値調整幅方式
    2. 第2節薬価維持期間経過後における革新的新薬の薬価の改定
    3. 第3節革新的新薬薬価維持制度対象品目等を比較薬にして算定された品目の取扱い
    4. 第4節長期収載品の薬価の改定
    5. 第5節再算定
    6. 第6節条件・期限付承認を受けた再生医療等製品の特例
    7. 第7節後発品等の価格帯
    8. 第8節低薬価品の特例
    9. 第9節革新的新薬薬価維持制度
    10. 第10節既収載品の薬価改定時の加算
    11. 第11節既収載品の外国平均価格調整
    12. 第12節費用対効果評価
  4. 第4章実施時期等 実施時期・改正手続・経過措置
  5. 別表1〜12算式と一覧 本文が「別表◯に定める算式により算定される額に改定する」と呼び出す先。算式が置かれているのは12のうち8つで、残りの4つは剤形区分・最低薬価の一覧と、企業要件の確認事項・後発品企業の評価の表

他のページで「第3章第◯節」と出てきたときは、この索引で位置を確認できます。 誰がこの基準を改正するのかは誰がどう決めるのか、 個々の用語の意味は用語集にまとめています。

本サイトの位置づけ

制度の全体像を理解するための教育・解説目的の資料です。 通知本文には数多くの例外・読替え・経過措置があり、本サイトはその主要部分を要約したものにすぎません。 実務上の判断にあたっては、必ず通知本文および別表、関連する事務連絡・Q&Aをご確認ください。