Section 04

新薬の薬価算定

新薬の価格は「似た薬があるか」で入口が分かれます。似た薬(類似薬)があれば類似薬効比較方式、 なければ原価計算方式です。

STEP 1
類似薬(効能効果・薬理作用・組成及び化学構造式・投与形態等からみて類似する既収載品)はあるか?
ある 類似薬効比較方式

比較薬と1日薬価を合わせる

ない 原価計算方式

原価を積み上げて算出する

  1. 補正加算画期性・有用性・市場性・小児・先駆・迅速導入 等
  2. 外国平均価格調整対象品目のみ
  3. 規格間調整非汎用規格がある場合
  4. 薬価決定

類似薬効比較方式

既にある似た薬の値段を物差しに、1日あたりの薬価を揃える方式です。 比較薬は原則、過去10年間に薬価収載され、後発品が収載されていない既収載品から選びます。

何を物差しに取るかで2つの型に分かれます。 同種同効薬が高値で次々に入ると医療費が膨らむため、追随品には価格上のインセンティブを与えません。

類似薬効比較方式(Ⅰ) 最類似薬 1剤 に合わせる

いつ使うか

補正加算の対象となる新薬。補正加算の対象とならない新薬も、(Ⅱ)に当たらなければ原則として(Ⅰ)で算定する(組成・剤形区分・製造販売業者が同じ最類似薬がある場合などの特例を除く)

算定

新薬の1日薬価 = 比較薬の1日薬価剤形区分が異なる場合は剤形間比を乗じる

補正加算

算定した額に上乗せされる

類似薬効比較方式(Ⅱ) 薬理作用類似薬の価格水準に合わせる

いつ使うか

補正加算の対象とならない新薬のうち、組成が同一の薬理作用類似薬がなく、かつ薬理作用類似薬の組成の種類が3以上ある場合(既収載品と組成が同じで、医療上の必要から用法・用量を変えた新薬を除く)

算定

まず候補を出す
  • 過去 10年 に収載された薬理作用類似薬の1日薬価の相加平均と、 過去 6年 に収載された薬理作用類似薬の最も低い1日薬価の、 低いほうを取る
  • ①がないとき10年 より前に収載された薬理作用類似薬のうち、 収載がいちばん新しい1剤の1日薬価
その額が高すぎるときは出し直す

①または②で出た額が類似薬効比較方式(Ⅰ)の額を超えるときは、次のイ・ロ・ハのうちいちばん低い額

  • 類似薬効比較方式(Ⅰ)の額
  • 薬理作用類似薬の1日薬価の相加平均対象は、①のときは過去 15年、②のときは過去 20年 に収載されたもの
  • 薬理作用類似薬の最も低い1日薬価対象は、①のときは過去 10年、②のときは過去 15年 に収載されたもの

補正加算

原則なし

※ (Ⅰ)(Ⅱ)とも、比較に使う類似薬が市場性・特定用途・小児・先駆・迅速導入の各加算を受けている場合は、その加算額を控除した額をその薬の1日薬価とみなします(加算の連鎖を防ぐため)。
※ 上に出てくる期間は、いずれも承認日の前日から起算します。

原価計算方式

類似薬が存在しない新薬は、コストを積み上げて価格を作ります。 ただし積み上げた額がそのまま通るわけではありません。ここでは主な抑えとして、販管費と営業利益(下の式の①②)を説明します。

原価計算方式の算式(第1章22) 薬価 = 原価販管費営業利益流通経費消費税相当額 原価は原材料費・労務費・製造経費・製品輸入原価など。販管費(販売費及び一般管理費)には研究開発費を含みます。消費税相当額は、基準の正式な名前では「消費税及び地方消費税相当額」です。
① 販管費の上限
一定の新薬では、原価・販管費・営業利益の合計に占める販管費の割合を70%までに抑える
② 営業利益の係数
平均的な営業利益率に、革新性の程度に応じた0.5〜1の係数を掛ける

※ 販管費の上限70%がかかるのは、開示度が80%以上でその妥当性が確認でき、かつバイオ医薬品でないなどの要件を満たす新薬です。希少疾病用医薬品などで、平均を超える係数が妥当と薬価算定組織が認めた場合は除きます。
※ 平均的な営業利益率等の係数は、前年度末時点で得られる直近3か年の平均値を用います。
※ 再生医療等製品の流通経費は、実費を勘案した額とし、平均的な係数で計算した額を超えないこととされています。
※ 日本以外への輸出価格の資料が提出された場合、原則として米・英・独・仏への輸出価格のうち最も低い価格を日本への輸出価格とみなします(日本への実際の輸出価格を超える場合を除く)。海外導入品の原価を過大に積み上げさせないための規定です。

原価計算方式の品目に補正加算が付くときは、原価をどれだけ開示したか(開示度)に応じて、加算額に係数が掛かります。 開示度 = 製品総原価のうち薬価算定組織での開示が可能な額 ÷ 製品総原価 です。

50%未満の係数が 0.2 から 0 になったのは令和4年度で、令和8年度基準もこれを引き継いでいます。 令和8年度改革では見直しが検討されましたが改正は行わず、業界の開示度向上の努力を待って次期改革で引き続き検討することとされました。

補正加算

ここまでで求めた額に、その新薬の価値を評価して上乗せするのが補正加算です。 革新性が高いほど加算率が大きくなり、併用が認められる複数の加算に該当する場合は、加算率を合計します。 率をかける相手は補正加算前の額であって、最終的な薬価ではありません。

補正加算の種類と加算率(令和8年度基準・別表2)
加算の種類加算率主な要件
画期性加算70〜120%①臨床上有用な新規の作用機序 ②類似薬・既存治療に比して高い有効性又は安全性 ③治療方法の改善 の3要件すべて
有用性加算(Ⅰ)35〜60%画期性加算の3要件のうち2つを満たす
有用性加算(Ⅱ)5〜30%3要件のいずれか1つ、または製剤上の工夫による高い医療上の有用性
市場性加算(Ⅰ)10〜20%希少疾病用医薬品で、その効能又は効果が主たる効能である(指定基準への該当性により例外的に下限5%)
市場性加算(Ⅱ)5%市場規模が小さいものとして定められた薬効に該当する
特定用途加算5〜20%特定用途医薬品の指定を受けている
小児加算5〜20%主たる効能又は用法用量に小児(幼児・乳児・新生児・低出生体重児を含む)が明示的に含まれる
先駆加算10〜20%先駆的医薬品の指定を受けている
迅速導入加算5〜10%国際共同試験等による開発/優先審査対象/欧米より早いか最初の申請から6か月以内の申請/同じく承認 の4要件すべて

※ 併用できない組み合わせがあります。たとえば、画期性加算・有用性加算(Ⅰ)・有用性加算(Ⅱ)は重ねて適用せず、先駆加算と迅速導入加算も併用しません。市場性加算(Ⅱ)は、市場性加算(Ⅰ)・特定用途加算・小児加算の対象品を除きます。ほかにも除外の定めがあります。
※ 加算率の幅の中でどの水準になるかは、有効性の改善の程度・対象患者数・エビデンスの質などを踏まえて個別に判断されます。
※ 高額な再生医療等製品と、条件・期限付承認を受けた再生医療等製品には、規模に応じて加算率を動かす別算式があります。

外国平均価格調整

算定した価格が諸外国と極端に乖離していないか確かめる仕組みです。参照するのは米・英・独・仏の4か国。 米国はメディケア又はメディケイドの価格表の価格を用います(双方にあれば平均)。 下の算定値は、補正加算まで済ませた額です。

対象は、原価計算方式で算定した新薬と、類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定した新薬のうち薬理作用類似薬がないものです。 類似薬効比較方式(Ⅱ)や、薬理作用類似薬がある(Ⅰ)の新薬には行いません(第1章34)。

引き上げ 調整なし 引き下げ 0.75倍 1.25倍 2倍 算定値 ÷ 外国平均価格 → ↑ 調整後の額

縦軸は外国平均価格を1とした調整後の額。破線は調整しなかった場合。 左下の急な部分は、引き上げの上限(算定値の2倍)にあたる。 図は1品目の基本の場合。組成・剤形区分・製造販売業者が同じ複数の品目を同時に収載するときは、変化率を平均する別の定め(別表3の3)による。

外国平均価格調整の2つの算式
調整算定値が外国平均価格の調整後の額
引き下げ1.25倍を上回る算定値÷3外国平均価格×5÷6
引き上げ0.75倍を下回る算定値÷3外国平均価格÷2
算定値の2倍が上限
外国平均価格を算出するときの除外・補正ルール
状況取扱い
価格が2か国以上あり、最高価格が最低価格の2.5倍を上回る最高価格を除外して相加平均(2か国のみの場合は最高価格を除いた価格)
価格が3か国以上あり、最高価格がそれ以外の相加平均の2倍を上回る最高価格を「それ以外の相加平均の2倍」とみなして相加平均
外国平均価格が1か国のみの価格に基づく引き上げ調整は行わない

※ 「調整後の額」は本サイトの呼び方で、条文は「次の算式により算定される額」とだけ記しています。
※ 引き下げ調整には除外要件もあります。未承認薬等検討会議の検討結果を踏まえ厚労省が開発を要請・公募した品目で、外国承認後10年を経過し、算定値が外国平均価格の3倍を上回る場合は、調整の対象外です。
※ 収載時に参照できる外国価格がなかった輸入品については、後から外国価格が掲載された際に既収載品の外国平均価格調整(第3章第11節)を受けることがあります。上限は改定前薬価の120%、対象は後発品未収載かつ収載から15年を経過していない品目です。

規格間調整

同じ成分でも、含量の違う複数の規格が同時に収載されるのが普通です。 その全部をここまでの手順で算定するのではなく、代表の1規格だけを算定し、 残りは含量をもとに導きます。これが規格間調整です。

汎用新規収載品
年間販売量(有効成分量ベース)が最も多くなると見込まれる規格。ここまでの算定はこの規格に対して行います。
非汎用新規収載品
それ以外の規格。規格間調整で薬価を求めます。

ただし、含量の比をそのまま薬価に移すわけではありません。どれだけ移すかの勾配(規格間比)は、 既にある類似薬が規格の間で付けている価格差から読み取ります。 この勾配は含量に比例する(含量2倍で薬価2倍)のが上限です。 内用薬で通常の最大用量を超える規格などは、さらに含量2倍で薬価1.5倍までに抑えます。

本サイトの位置づけ

制度の全体像を理解するための教育・解説目的の資料です。 通知本文には数多くの例外・読替え・経過措置があり、本サイトはその主要部分を要約したものにすぎません。 実務上の判断にあたっては、必ず通知本文および別表、関連する事務連絡・Q&Aをご確認ください。