Section 03
2026年度(令和8年度)改革の要点
令和8年度の薬価制度改革は、近年でも特に構造的な変更を含みます。 革新性の評価を特許期間に集中させ、特許が切れた後は速やかに後発品水準へ落とします。このメリハリが、加算の増減ではなく制度の名称と類型そのものを組み替える形で実行されました。 改定率だけを見れば▲0.86%と小幅ですが、後発品が出たあとの先発品の下がり方は大きく速まりました。
改定率は2025年12月24日の予算大臣折衝で決着したものです。→ 中医協と政府の動き
改革を1枚で見る
この改革がいちばんはっきり現れるのは、後発品が出たあと、先発品の薬価が何年で後発品の水準まで下がるかです。 後発品が出るまでの据置きは、令和6年度からの新薬創出等加算とほとんど変わりません。 変わったのはその後の下がり方で、図にすると次のようになります。
後発品が出たあとの下がり方が速くなった
収載時の薬価を100とした模式図。後発品は収載から12年後に出たとし、それまではPMP(従来は新薬創出等加算)の要件を満たし続け、再算定は受けないものとします。後発品への置換え率は80%未満のままとします。
- 従来ルール(令和7年度基準まで)
- 令和8年度基準
- 後発品の薬価
数値は説明のための仮の値で、実際の下がり方は乖離率・後発品の価格水準・置換え率によって品目ごとに異なります。 要点は3つです。 ①後発品が出るまでは、新旧とも改定前薬価に据え置かれます。新薬創出等加算も令和6年度から、改定前薬価まで戻る額を加算する形になっていて、PMPで変わったのは仕組みの立て方です。 ②後発品が出たときに、維持してきた分を控除するのも新旧同じです。 ③違いは後発品が出たあとにあります。置換えが進まない品目は、従来はZ2を経て10年でG2に移り、後発品の1.5倍で止まりました。令和8年度基準では5年でG1に移り、6年かけて後発品と同じ水準まで下がります。 置換え率が80%以上になった品目は、従来も10年を待たずにG1に移れたため、新旧の差はこれより小さくなります。 → 薬価の一生
主な変更点
令和8年度基準で変わった点を、従来のルールと並べて整理します。 それぞれの詳しい仕組みは、各行のリンク先で解説しています。
| 領域 | 従来 | 令和8年度基準 |
|---|---|---|
| 新薬(収載から後発品が出るまで) | ||
| 価格維持 | 新薬創出・適応外薬解消等促進加算 実勢価改定で下げた額に、改定前薬価まで戻る額を加算(令和6年度から) |
革新的新薬薬価維持制度(PMP) 要件を満たせば改定前薬価に据え置き。加算ではなく「薬価維持期間」として整理した。薬価の動きは従来と同じ |
| 市場拡大 |
市場拡大再算定を受けた品目の薬理作用類似薬も一緒に引下げ | 廃止 組成の違う類似薬の事情では下がらなくなった。代わりに、再算定を受けた品目の類似薬のうち後発品のない新薬は、自らの販売額が要件を満たせば、改定を待たず年4回の機会に再算定される |
| 巨額 |
市場拡大再算定の特例 1,000億円超/1,500億円超の2段構え。引下げの下限は改定前薬価の75%/50% |
持続可能性特例価格調整(SPA-SSS) 2段構えは従来の特例と同じ。収載時から1,500億円超と見込まれた品目などが3,000億円超・基準の10倍以上になると、改定前薬価の1/3まで下げられるようになった |
| 長期収載品(後発品が出たあとの先発品) | ||
| 引下げの |
Z2・G1・G2・C の4類型 G1/G2は後発品収載後10年から |
G1に一本化 後発品収載後5年で対象。2年ごとに後発品価格の2.5倍→2倍→1.5倍→1倍へ |
| 選定療養 薬価 |
患者の特別の料金は価格差の1/4 | 価格差の1/2に(2026年6月〜) 患者の特別の料金。対象品目の要件は変更なし。価格だけでなく数量の面からも長期収載品が選ばれにくくなる |
| 後発品 | ||
| 先発品と |
(規定なし) | 新設(2026年10月収載分〜) 組成・剤形・製法が先発品と同一の後発品は、0.5掛けせず類似薬効比較方式(Ⅰ)で先発品と同水準に算定。0.4掛けを判定する品目数(内用薬で7品目超)にも数えない |
| 後発品 |
企業をA・B・Cに区分 令和6年度から試行。A区分の企業の品目のうち、後発品の収載から5年以内か安定確保医薬品A・Bに当たるものに限って、価格帯の集約から外した |
集約から外す品目を広げた 別表11。A区分の企業の品目は、値引きを抑え、最上位の価格帯にとどまり、供給を切らしていなければ、価格帯の集約から外れる。品目統合で減った分は評価の計算から除外 |
| 全品目 | ||
| 最低薬価 | 剤形ごとの下限額 | 概ね3.5%引上げ 物価動向を踏まえた対応。塗布剤などにも新たに下限を設けた。下げるルールが強まる一方で、下限の側も引き上げられた |
※ 「従来」欄は、令和8年度基準の直前の基準(令和7年2月19日 保発0219第1号)の規定です。令和7年度基準は中間年改定に合わせた版で、「従来」欄に書いた内容は令和6年度基準(令和6年2月14日 保発0214第1号)と同じです(最低薬価の額だけは令和7年度にも引き上げられています)。
※ 選定療養は薬価算定基準ではなく保険給付上の仕組みですが、長期収載品の扱いという点で同じ方向を向いているため併記しました。
立場別に何が効くか
- 追い風
- 向かい風
- 条件・留意点
新薬中心の企業
据置きは従来どおり。変わったのは再算定の側。
- 追い風:共連れの廃止。組成の違う他社品の事情では下がりません
- 条件・留意点:要件(品目・企業・乖離率など)を満たす品目は、後発品が出るか収載15年までは据置き。新薬創出等加算からの組み替えで、薬価の動きは従来と同じ
- 向かい風:巨額品目はSPA-SSSで、条件によっては改定前薬価の1/3まで下がる
長期収載品を抱える企業
価格と数量が同時に細る。撤退の時期も早まる。
- 向かい風:G1一本化・5年前倒し。置換えが進まない品目も11年で後発品並みに
- 向かい風:選定療養の負担が倍。価格と数量が同時に削られます
- 条件・留意点:激変緩和(50%上限・円滑実施係数)は令和8年度限り
- 条件・留意点:G1が早まるぶん、撤退の手続も早く使えます
後発品企業
品目を絞り、供給責任を果たす企業ほど有利。
- 追い風:先発品と同一の後発品は先発と同水準(10月収載分〜)
- 追い風:品目統合で減った品目は、企業評価の計算から外れます
- 条件・留意点:企業評価A区分の品目は、値引きを抑えるなどの条件を満たせば価格帯の集約から外れます
※ 医療機関・薬局・患者の側から見れば、選定療養の負担増(2026年6月〜)が最も直接的な変化です。
決定から施行まで
「令和8年度改革」と一括りにされますが、決まった時点も、効き始める時点も一つではありません。 中身は前年12月の大臣折衝と2月の通知で固まり、施行は薬価が4月、診療報酬本体は6月、 後発品の一部ルールは10月収載分からと分かれています。新しいものから順に並べています。
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2026.10
「先発品と同一の後発品」の算定ルールが適用開始
2026年10月以降に収載される品目から適用されます。算定ルールのうち、 施行日が明示的に先送りされたのはこの項目だけです(費用対効果評価の見直しも、 別表12は「別途定める通知」の発出待ちで、実質的に据え置かれています)。
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2026.06
選定療養の特別の料金が価格差の1/2へ
診療報酬本体の施行に合わせた変更です。薬価(4月)とは2か月ずれて効き始めました。
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2026.04.01
新基準・新薬価の適用開始
PMP・SPA-SSS・G1一本化・共連れの廃止・最低薬価の引上げは、 いずれもこの日から適用されています。改革の大部分はここで動き出しました。
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2026.03.31
旧基準の廃止
直前の基準(令和7年2月19日 保発0219第1号)は、この日限りで廃止されました。
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2026.03.05
改定薬価の告示(厚生労働省告示第72号)
改定後の薬価が告示されました。適用は4月1日からです。 改定率は薬剤費ベースで▲4.02%(医療費ベース ▲0.86%)。
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2026.02.13
新しい薬価算定基準の通知(保発0213第3号)
「薬価算定の基準について」が全面改正されました。PMP・SPA-SSS・G1一本化は、いずれもこの通知に書かれています。 → 基準はどこに書かれているか
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2025.12.24
予算大臣折衝 — 改定率と方向性が決着
薬価▲0.86%(国費▲1,052億円程度)、診療報酬本体+3.09%。 あわせて共連れの廃止と最低薬価の物価対応もここで方向づけられました。 制度の細部は、この枠のなかで中医協が詰めていきます。