Data Guide

NDBデータの読み方と使い方

薬価は「1錠いくら」を決める制度です。では、その薬がどれだけ使われたかはどこを見れば分かるのか。 国が保険請求の記録を集めたNDBが、いまのところ唯一の全数に近い記録です。 このページは、申出なしで誰でも使えるNDBオープンデータの読み方を中心に、 薬価のデータとつなぐときの注意、nominaDBの品目ページでの見せ方、申し出て使う第三者提供の道筋をまとめます。

NDBとは何か

NDBは匿名医療保険等関連情報データベースの通称で、 医療機関や薬局が保険者へ出したレセプト(診療報酬明細書)と、 特定健診・特定保健指導の結果を、国が集めたものです。 高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、 2009(平成21)年から運用されています。レセプトは2009年度分から、特定健診等は2008年度分から積み上がっています。

日本は国民皆保険なので、保険で行われた医療はほぼすべてがここに集まります。 厚生労働省自身が「世界でも有数の規模と悉皆性」と書いているとおり、 数量をつかむための土台としては、ほかに代わりがありません。

入っているもの

  • 保険請求された診療行為・処方薬・特定保険医療材料の内容と回数・数量
  • 患者の性別・年齢・都道府県(医療機関/薬局の所在地)
  • 傷病名、入院/外来の別、院内処方/院外処方の別
  • 特定健診の検査値と質問票の回答

入っていないもの

  • 保険を使わない医療(自由診療・全額自費)と市販薬
  • 実際の取引価格(納入価)。レセプトは公定価格である薬価で請求されるため、価格の情報は薬価そのものです
  • 企業の販売額や出荷量。これは薬価調査や企業の報告の世界で、NDBとは別です
  • 患者の氏名など、個人を直接特定する情報
第11回NDBオープンデータの集計に使われた1年分の件数
レセプトの種類格納件数
医科入院約1,540万件
医科入院外約10億8,200万件
DPC約1,620万件
歯科入院約22万件
歯科入院外約2億5,610万件
調剤約7億5,230万件
特定健診約3,100万件

※ レセプトは2024(令和6)年4月〜2025(令和7)年3月の1年分、特定健診はその1年前の1年分です。公費レセプトを含む件数です。
※ 出典:第11回NDBオープンデータ 解説編(厚生労働省保険局、令和8年5月)1-1・1-2。

誰でも使える集計表 — NDBオープンデータ

NDBそのものは申出と審査を経ないと使えませんが、 そこから作られた基礎的な集計表は「NDBオープンデータ」として公表されていて、 申出の手続も手数料も要りません。2016(平成28)年10月の第1回から続き、 いま公表されている最新は第11回です。

公表されるのは次の8分野です。薬価の話で使うのは、ほとんどが処方薬調剤行為です。

  1. 医科診療行為(算定回数・患者数)
  2. 歯科診療行為(算定回数・患者数)
  3. 歯科傷病
  4. 調剤行為(算定回数・患者数)
  5. 処方薬(内服・外用・注射の処方数量)
  6. 特定保険医療材料
  7. 特定健診(検査)
  8. 特定健診(質問票)

第11回で変わったところ

第10回までの処方薬の集計表は、薬効分類ごとに処方数量の上位の品目までしか載っていませんでした。 上限は回によって違い、第1回は30品目、第2〜8回は100品目、第9・10回は分類により300か500品目です。 第11回ではこの絞り込みが撤廃され、薬効分類ごとに全品目が処方数量の多い順に並びます。 品目単位で数量を追いたい人にとっては、いちばん大きい変更です。

裏を返すと、第10回までの表では、品目の多い分類(解熱鎮痛剤・血圧降下剤など)で少量の品目が載っていません。 過去の回を並べて推移を見るときは、古い回ほど少なめに出ることに注意が要ります。

もうひとつ、第10回から公費レセプトを含む集計表が加わりました。 第9回までと同じ「公費を含まない」集計表も並んで公表されているので、 過去の回と年次で比べるときは含まない方を、いまの実態を見るときは含む方を選びます。 どちらを見ているかは、集計表の1行目に書かれています。

ファイルはzipのなかにExcelが入った形で、厚生労働省のページから落とせます。 グラフで眺めるだけならNDBオープンデータ分析サイトもあります。

※ 出典:第11回NDBオープンデータ(厚生労働省)、同解説編 1-2・1-3。 申出も手数料も要らないことは第三者提供のFAQ(2026年6月更新)の問15にあります。

処方薬の表の読み方

処方薬の集計表は、薬効分類3桁ごとに品目を並べ、その右に数量を置いた形です。列はこうなっています。

処方薬の集計表の列(第11回・内服の例)
中身
薬効分類/名称3桁の薬効分類コードと名称(例:114 解熱鎮痛消炎剤)
医薬品コードレセプト電算処理システムで使う9桁のコード
医薬品名・単位商品名と、数量の単位(錠・g・mL など)
薬価基準収載医薬品コード12桁の品目コード。薬価のデータと突き合わせる鍵になります
薬価参考として付いている薬価。集計対象期間の水準です
後発品区分0=後発品以外、1=後発品
総計(処方数量)1年分の処方数量の合計
男・女 × 5歳階級0〜4歳から100歳以上まで、性別・年齢階級ごとの処方数量

処方数量は「1日(1回)当たりの使用量 × 日数(回数)」です。 単位は品目ごとに違い、錠・g・mL が混ざります。 したがって品目をまたいで足しても意味を持ちません。足せるのは同じ単位の同じ剤形までです。

表は外来(院内)・外来(院外)・入院の3本に分かれていて、この3つを合わせて初めて全体になります。 DPCの入院は、包括されている薬もコーディングレコードに記録されるため、集計に含まれます。

「-(ハイフン)」は「ゼロ」ではない

少ない値は、患者が特定されないように伏せられます。伏せる基準は中身で違います。

  • 診療行為・調剤行為・材料など:10未満
  • 薬剤の内服・外用1,000未満
  • 薬剤の注射400未満
  • リハビリテーション(算定回数):100未満

さらに、伏せた箇所が行のなかで1つしかないと、総計から引き算で分かってしまいます。 そのため次に小さい値も一緒に伏せられます。「-」の数を数えて実数を推し量る、という読み方はできません。

実例を1行だけ挙げます。第11回の「【内服】外来(院外)_性年齢別薬効分類別数量_医科」から、カロナール錠200の行です。

読み取れること(公表値そのまま)

  1. 品目カロナール錠200(医薬品コード 620002023)単位:錠
  2. 区分薬価基準収載医薬品コード 1141007F1063、後発品区分 1後発品
  3. 薬価集計対象期間の参考値6.7 円
  4. 数量2024年4月〜2025年3月・医科の外来(院外)分約 5億9,785万 錠

※ 総計の公表値は 597,845,514.746 錠です。値は小数点以下第5位まで入ります(NDBの仕様)。
※ この表は公費レセプトを含まない側で、医科の外来(院外)分だけです。院内処方と入院、歯科は別の表にあります。
※ 年齢は、処方薬では実年齢です。ほかの分野で使われる「年度末年齢」とは別なので、並べて比べるときは注意が要ります。
※ 出典:「第11回NDBオープンデータ」(厚生労働省) 処方薬「【内服】外来(院外)_性年齢別薬効分類別数量_医科」(2026年9月16日に利用)。

薬価のデータとつなぐ

処方薬の表には薬価基準収載医薬品コード(12桁)が入っています。 これは薬価基準収載品目リストと同じコードなので、 nominaDBの品目データとそのまま突き合わせられます。 NDBが持っているのは数量、薬価のデータが持っているのは価格と制度上の扱いで、 両方をつなぐと「どのルールが、どれだけ使われている薬に効いているのか」が見えます。

ただし、そのままでは当たらない行もあります。集計期間のあとにコードが変わった品目や、 統一名収載品の中の銘柄は、12桁のコードでは見つかりません。nominaDBでは ① 薬価基準収載医薬品コード → ② 9桁の医薬品コード(銘柄) → ③ 品名の順に当てています。 それでも当たらない行の多くは、集計期間のあとに薬価から削除された品目です。

「数量 × 薬価」は販売額ではない

薬価は公定価格で、実際の取引はそれより安い価格で行われます(その開きが乖離率です)。 数量に薬価を掛けた額は薬価ベースの規模の目安であって、市場で動いたお金ではありません。

制度の側もNDBを見ている

再算定の判定に使う年間販売額は、薬価に販売数量を掛けた額です。 その数量をどこから取るかについて、中医協の資料は薬価調査とNDBを挙げています。 とくに改定を待たない四半期再算定では、NDBで市場規模を把握すると明記されています。 12月・3月・6月の各診療分を3か月後に抽出し、薬価算定組織の検討と中医協の告示を経て、 診療月の8か月後に施行する——というのが公表されている流れです。

ただし国が見ているのはNDBの元データで、このページで扱っている公表用の集計表とは、細かさも新しさも違います。 オープンデータから同じ判定を再現することはできません。 nominaDBの「年間販売額の推移」も、判定の考え方をなぞった推計です。

※ 突き合わせの例:カロナール錠200の参考薬価はNDB側で6.7円(2024年度の集計対象期間)、 2026年4月1日適用の薬価は6.5円です。同じ品目でも時点が違えば額は違います。NDB側の薬価は参考情報として付いているものです。
※ nominaDBの品目ページの数字は、NDBオープンデータをnominaDBが集計・加工したもので、厚生労働省の公表値ではありません。
※ 制度側でのNDBの利用について:中医協 薬価専門部会 「令和8年度薬価改定について⑤」(薬-1、令和7年11月19日)。 四半期再算定のスケジュールは同資料に再掲された中医協 薬-1参考3(平成30年1月17日)によります。

nominaDBの品目ページでは

nominaDBの品目ページでは、薬価の推移や年表のタイルの下に続く「処方数量と薬価ベースの売上高」の欄に、NDBオープンデータから集めた数字を出しています。 どの表から、どう作っているかは次のとおりです。

品目ページで見られるものと、元にしているNDBの表
見られるもの元にしている表作り方と注意
処方数量・薬価ベースの売上高 第11回(2024年度)・公費を含む・診療月別の総計 院内・院外・入院を合わせた1年分。売上高は月ごとの数量にその月の薬価を掛けて足した額(期中の改定も効かせる)
同一成分規格の中のシェア 同上。統一名収載品は9桁の医薬品コード(銘柄)ごと 同じ成分・剤形・規格の品目の中での、数量と金額の割合。年間と月別
年間販売額の推移と市場拡大再算定の要件 第1〜11回(2014〜2024年度)・公費を含まない・都道府県別の総計 10年を同じ物差しで並べるため、全回にある「含まない」版を使う。成分と投与形態が同じ品目(後発品を含む)を足し、収載時の予想年間販売額と比べる。第10回までの上位の切り方で品目が抜けている年度には印を付ける(先発品のみ)
院内・院外・入院、月別 第11回・診療月別 月ごとに分けると伏せられる値が増えるので、図に入っていない分を図の下に書く
性別・年齢別 第11回・性年齢別 年齢は処方時点の実年齢。伏せられた分は同じく図の下に書く
都道府県別・人口あたり 第11回・都道府県別、総務省統計局「人口推計(2024年10月1日現在)」 医療機関・薬局の所在地で数えた量。人口あたりは総人口で割った値で、通院で人の集まる都市部は高めに出る

例として、カロナール錠200(後発品。シェアと内訳)と、 オプジーボ点滴静注100mg(先発品。年間販売額の推移と再算定ライン)のページがあります。 内訳の無料・有料の扱いは出典・データ利用方針に書いています(いまは2024年度分まで、内訳を含めてすべて無料)。

申し出て使う — 第三者提供

集計表にない切り方——患者を年単位で追う、併用を見る、期間を区切る——が必要になったら、 NDBそのものの提供を申し出ることになります。2011(平成23)年から続く仕組みで、 国の行政機関・都道府県・市区町村のほか、大学や研究開発法人、民間事業者も申し出られます。 ただし相当の公益性があることが前提で、社内資料や特定の顧客向けの資料を作るだけでは認められません。

提供の形
中身
特別抽出申出者が指定した条件で、厚生労働省がNDBから抜き出したデータ
集計表抽出に集計処理まで加えて渡されるもの。地域は市区町村まで、集計軸は3次元以内、表は10表以内が原則
サンプリングデータセットあらかじめ一定割合で抽出し、高額レセプトを除くなどの処理をした既製のデータ。簡易な審査で使えるトライアルデータセット、年単位の追跡ができる通年パネルデータセットがある
NDB-β個人特定につながる項目を伏せたデータセット
リモート用全量NDB解析基盤(HIC)またはオンサイト環境の上で、全量を参照できるもの

受け取り方も、自分の施設で解析する形と、 厚生労働省のクラウド基盤(HIC)やオンサイトリサーチセンターの中だけで解析する形があります。 オンサイトでは、持ち出せるのは公表の基準を満たしたものだけです。

申出から公表までの順序

  1. 1窓口へ事前相談(内容の確認に1か月以上かかることがある)
  2. 2二次利用ポータルから提供申出
  3. 3専門委員会で審査(介護DBなどと連結するときは合同委員会)
  4. 4承諾の通知と、手数料の見込額の通知
  5. 5データの提供・解析
  6. 6公表前確認を受けて、はじめて外に出せる成果物
手数料(令和6年10月の政令改正後)
種類
基本利用料新規申出 1件 162,100円/変更申出 1件 81,000円(軽微な変更は16,200円)
調整業務料1時間あたり 8,600円 × 所要時間
データ料1時間あたり 58,300円 × 所要時間 + 容量(ギガバイト)に応じた額
クラウド環境利用料月あたり 約10万〜約90万円程度 + オプションに応じた額

※ 研究者個人の負担を考えた減免と支払上限額の定めがあります。申出の前に、厚生労働省が公表している「手数料推計ツール」で見積もることが求められています。
※ 厚生労働省は、新規の申出から特別抽出データや集計表の提供までに300日以上かかると案内しています(2026年9月時点)。思い立ってすぐ使えるものではありません。
※ 出典:NDBの利用に関するガイドライン 第3.1版(厚生労働省保険局)第2・第3・第5、 匿名医療保険等関連情報データベースの利用に関するホームページ

つまずきやすいところ

読み違いやすい点
やりがちなことなぜ違うのか
「-」を0として合計する 「-」は伏せられた値で、0とはかぎりません。内服・外用なら1,000未満、注射なら400未満が伏せられます
品目の数量を足し上げる 単位が錠・g・mLと混ざっています。数量を合計してよいのは、単位がそろっている範囲だけです
1つの表で全体を語る 外来(院内)・外来(院外)・入院は別の表です。公費を含む/含まないの2系統もあります
最新の年度だと思う 公表は1年分ずつで、年度が終わってから1年あまりかかります。第11回(解説編は2026年5月付け)で2024年度分です
数量から金額を出す 掛けられるのは薬価であって、実際の取引価格ではありません
過去の回とそのまま比べる 回ごとに集計の条件が変わります。第10回までは処方薬が薬効分類ごとの上位(30〜500品目)で切られ、第10回からは公費を含む版も加わりました。年次で比べるなら、公費を含まない版で、切られた品目に注意して並べます

※ このページで挙げた数値と手続は、第11回NDBオープンデータ解説編、NDBの利用に関するガイドライン第3.1版、 第三者提供のFAQ(2026年6月更新)および厚生労働省の該当ページによります。 実際に申し出るときは、必ず最新の公表物をご確認ください。