Section 17

データで見る薬価制度の変化

制度の条文だけを読んでも、なぜそのルールになったのかは見えてきません。 ここでは薬価調査の乖離率調整幅の推移、薬価ベースの取引額(約11兆円)の構成、カテゴリー別と下支え分野の乖離率、 不採算品再算定新薬創出等加算からPMPへの変遷、長期収載品のルールの変化を並べて、 ルールがどんな現実に反応して動いてきたのかを整理します。

平均乖離率は32年で約20%から5%へ縮んだ

乖離率(薬価と実際の取引価格の開き)は、記録をさかのぼれる平成5年度の19.6%から、 令和7年度には記録上最小の4.8%まで縮みました(算式や集計の条件はページ末の「このページの数値について」)。

縮み方は一様ではありません。1990年代に9.5%へ半減したあと(急落の理由は次節の調整幅の変遷)、 平成13〜29年度は6〜9%台で上下し、平成29年度の9.1%がこの期間の最大でした。 令和元・2年度の8.0%を境に再び縮んでいます。

薬価改定は平成に入ってからは2年に1度が基本でしたが(実勢価改定:改定の頻度)、平成8〜10年度は3年続けて改定されました。 薬価調査が隔年だったのは平成11〜29年度で、調査のない年度に点がないのはそのためです。平成30年度以降は消費税改定を挟んで毎年度実施されており、 令和8年度改定で9年連続になります。

平均乖離率(推定乖離率)の推移

各年9月取引分の薬価調査による

20% 15% 10% 5% 0% 平成30年度から毎年改定 平成5年度:19.6% 平成7年度:17.8% 平成8年度:14.5% 平成9年度:13.1% 平成11年度:9.5% 平成13年度:7.1% 平成15年度:6.3% 平成17年度:8.0% 平成19年度:6.9% 平成21年度:8.4% 平成23年度:8.4% 平成25年度:8.2% 平成27年度:8.8% 平成29年度:9.1% 平成30年度:7.2% 令和元年度:8.0% 令和2年度:8.0% 令和3年度:7.6% 令和4年度:7.0% 令和5年度:6.0% 令和6年度:5.2% 令和7年度:4.8% 19.6 17.8 14.5 13.1 9.5 7.1 6.3 8.0 6.9 8.4 8.4 8.2 8.8 9.1 7.2 8.0 8.0 7.6 7.0 6.0 5.2 4.8 H5 H11 H17 H23 H29 R7 1993 1999 2005 2011 2017 2025 20% 15% 10% 5% 0% 平成30年度から毎年改定 19.6 9.5 6.3 9.1 4.8 H5 H15 H25 R7
数値を表で見る
平均乖離率(推定乖離率)の推移
調査年度西暦平均乖離率
平成5年度199319.6%
平成7年度199517.8%
平成8年度199614.5%
平成9年度199713.1%
平成11年度19999.5%
平成13年度20017.1%
平成15年度20036.3%
平成17年度20058.0%
平成19年度20076.9%
平成21年度20098.4%
平成23年度20118.4%
平成25年度20138.2%
平成27年度20158.8%
平成29年度20179.1%
平成30年度20187.2%
令和元年度20198.0%
令和2年度20208.0%
令和3年度20217.6%
令和4年度20227.0%
令和5年度20236.0%
令和6年度20245.2%
令和7年度20254.8%

平成6・10・12・14・16・18・20・22・24・26・28年度は薬価調査を実施していないため、値がありません。
令和元年度の推定乖離率8.0%は、平成30年4月の薬価に対する乖離を示します。 令和2・4・6年度(中間年)の調査は、販売サイドを3分の2の抽出率(営業所ベース)で実施したものです。
出典:中医協 薬-2「薬剤費等の年次推移について」(令和5年8月23日)、同「薬剤費及び推定乖離率の年次推移」(平成22年6月23日)、 各年度の薬価調査結果(速報値)。

乖離率はルールの分岐条件でもある

中間年改定の対象は平均乖離率に倍率を掛けた値を超える品目で(各年度の倍率は実勢価改定:改定の頻度)、 PMP(革新的新薬薬価維持制度)は乖離率が全品目平均を超える品目には適用されません。 乖離率が縮むほど、これらの閾値も自動的に下がります。

調整幅は15%から2%へ絞られた

改定後の薬価は、実勢価格の加重平均値に一定の幅を上乗せして決まります。 この幅(かつてのR幅、平成12年度からは調整幅)は、平成4年度の15%から平成12年度の2%へ絞られました。

価格幅が狭まるのに合わせて、乖離率も下がった

線は価格幅(R幅・調整幅)、点は薬価調査による平均乖離率です。価格幅は適用した年度の4月、乖離率は調査した年の9月の位置に置いています。

バルク ライン 0% 5% 10% 15% 20% 1990 2000 2010 2020 19.6% 4.8% 平均乖離率(薬価調査) 長期収載品 R15 R13 R11 R10 R5 調整幅 2% 0% 5% 10% 15% 20% 1990 2000 2010 2020 19.6% 4.8% 平均乖離率(薬価調査) R15 R13 R5 調整幅 2%

左端の灰色の帯はバルクライン方式の時期で、価格幅の考え方がありません。点線は長期収載品の幅です(値は下の表)。

価格幅の変遷
適用時期算定方式
昭和42年10月〜平成3年度バルクライン方式(昭和42年当時は統一限定列記収載・90%バルクライン)
平成4年4月加重平均値一定価格幅方式(R方式)へ移行R15(15%)
平成6年4月同上R13(13%)
平成8年4月同上R11(11%)
平成9年4月同上R10(10%)/長期収載品はR8
平成10年4月同上R5(5%)/長期収載品はR2
平成12年4月〜令和8年4月調整幅方式2%

バルクライン方式は昭和25年に導入され、昭和53年から銘柄別収載、昭和58年から価格のばらつきの大きい品目に81%バルクライン、昭和63年から修正バルクラインに改められました。
出典:中医協 薬-3「薬剤費等の年次推移について」(令和7年8月6日)の「薬価改定の経緯①②」(令和7年4月まで)。令和8年4月は「薬価算定の基準について」(令和8年2月13日保発0213第3号)別表5。

R幅は、薬価差を制度として認めていた幅だった

R方式では実勢価格の加重平均値にR%を上乗せして新しい薬価を決めたため、医療機関や薬局が薬価より安く仕入れた分(薬価差)を手元に残せる構造が、 制度の側に用意されていました。当時「薬価差益」が経営上の収入源と語られたのはこのためで、 前節の平成5年度の乖離率もR15の時代の数字です。

平成4〜10年度の6年で幅は15%から5%へ絞られ、乖離率が半減した時期と重なります。 1990年代の急落は市場の自然な動きではなく、幅を絞ったことで実勢価格との開きもその幅へ収束した結果でした。

平成12年度からの「調整幅2%」は、26年動いていない

R方式の廃止とともに置かれた調整幅は、「医薬品流通の安定のための調整幅」(令和8年度基準 別表5)とされています。 R幅と違い、建前のうえでは薬価差を認める幅ではなくなりました(実勢価改定:乖離率と改定の計算)。

この2%は、平成12年4月から令和8年4月まで26年にわたって一度も動いていません(令和3年度改定では、これとは別に新型コロナウイルス感染症特例として一定幅0.8%が設けられました)。 毎年改定が定着して平均乖離率が4.8%まで縮んだいま、調整幅との差は2.8ポイントしかありません。 実勢価改定で拾える財源が痩せてきたと言われるのはこのためです。

11兆円の内訳:新薬が3分の2を占め、長期収載品は縮んだ

乖離率を掛ける相手、つまり薬剤費そのものの大きさと中身を見ておきます。 令和4年度の薬剤費は9.91兆円で、国民医療費46.70兆円の21.2%にあたります。 平成5年度の6.94兆円から29年で約1.4倍になりましたが、 薬剤費比率のほうは平成10年度以降ずっと19.6〜22.6%の範囲に収まったままで、 医療費に占める割合という意味ではほとんど動いていません。 薬剤費が増えているのは、薬の値段が医療費のなかで肥大しているからではなく、医療費全体が増えているからです。

もう一つの数え方として、薬価調査の取引数量に薬価を掛けて年額に換算した金額があります。2023年9月の調査では約11.2兆円です。 これを製品カテゴリーで割ると、金額の重心は後発品のない先発品(このページでは新薬と呼びます)に大きく寄っています。 新薬だけで64%・約7.2兆円。その内訳は、新薬創出等加算の対象品(新創品)が30%(約3.4兆円)、 それ以外の先発品が34%(約3.8兆円)です。残りは長期収載品13%(約1.5兆円)、 後発品16%(約1.8兆円)、その他6%(約0.7兆円)で、特許が切れた市場は合わせても3割にすぎません。

同じ数え方で2017年9月(約9.2兆円)と比べると、6年間の変化がはっきりします。 新薬は54%(約5.0兆円)から64%(約7.2兆円)へ比重を上げ、 長期収載品は約2.1兆円から約1.5兆円へ、金額でも3割近く縮みました(割合は23%→13%)。 後発品は約1.4兆円から約1.8兆円へ増えたものの、割合は15%→16%とほぼ横ばいです。 この間の2018年4月には薬価制度の抜本改革が行われ、長期収載品の段階的な引下げ(G1・G2)が始まっています。

医薬品の構成(薬価ベースの取引金額)

薬価調査の9月1か月分を12倍した年換算/帯の長さは金額に比例

  • 新創品(新薬創出等加算の対象品)
  • 新創品以外の先発品
  • 長期収載品
  • 後発品
  • その他
2023年9月の薬価調査より(計約11.2兆円) 新薬 64% 約7.2兆円 長期収載品 13% 約1.5兆円 後発品 16% 約1.8兆円 2023年9月 新創品(新薬創出等加算の対象品):30%(約3.4兆円) 2023年9月 新創品以外の先発品:34%(約3.8兆円) 2023年9月 長期収載品:13%(約1.5兆円) 2023年9月 後発品:16%(約1.8兆円) 2023年9月 その他の品目:6%(約0.7兆円) 新創品 30%/約3.4兆円 新創品以外の先発品 34%/約3.8兆円 その他 6%/約0.7兆円 2017年9月の薬価調査より(計約9.2兆円) 新薬 54%/約5.0兆円 2017年9月 新創品(新薬創出等加算の対象品):26%(約2.4兆円) 2017年9月 新創品以外の先発品:28%(約2.6兆円) 2017年9月 長期収載品:23%(約2.1兆円) 2017年9月 後発品:15%(約1.4兆円) 2017年9月 その他の品目:8%(約0.7兆円) 2.4兆円(26%) 2.6兆円(28%) 2.1兆円(23%) 1.4兆円(15%) 0.7兆円(8%) 2017年9月(計約9.2兆円) 2023年9月(計約11.2兆円) 新創品(新薬創出等加算の対象品) 2017年9月 新創品(新薬創出等加算の対象品):26%(約2.4兆円) 2.4兆円(26%) 2023年9月 新創品(新薬創出等加算の対象品):30%(約3.4兆円) 3.4兆円(30%) 新創品以外の先発品 2017年9月 新創品以外の先発品:28%(約2.6兆円) 2.6兆円(28%) 2023年9月 新創品以外の先発品:34%(約3.8兆円) 3.8兆円(34%) 長期収載品 2017年9月 長期収載品:23%(約2.1兆円) 2.1兆円(23%) 2023年9月 長期収載品:13%(約1.5兆円) 1.5兆円(13%) 後発品 2017年9月 後発品:15%(約1.4兆円) 1.4兆円(15%) 2023年9月 後発品:16%(約1.8兆円) 1.8兆円(16%) その他の品目 2017年9月 その他の品目:8%(約0.7兆円) 0.7兆円(8%) 2023年9月 その他の品目:6%(約0.7兆円) 0.7兆円(6%) 新薬(新創品+新創品以外の先発品) 5.0兆円(54%)→ 7.2兆円(64%)
数値を表で見る
医薬品の構成(薬価ベースの取引金額の年換算)
区分2017年9月 兆円(割合)2023年9月 兆円(割合)
新薬(合計)約5.0(54%)約7.2(64%)
 うち 新創品(新薬創出等加算の対象品)約2.4(26%)約3.4(30%)
 うち 新創品以外の先発品約2.6(28%)約3.8(34%)
長期収載品約2.1(23%)約1.5(13%)
後発品約1.4(15%)約1.8(16%)
その他の品目約0.7(8%)約0.7(6%)
合計約9.2(100%)約11.2(100%)

金額は、薬価調査で得られた調査月(9月)1か月分の取引数量に薬価を掛け、12倍して年額に単純換算したものです。 割合は四捨五入しているため、合計が100%にならないことがあります。
「新創品」は、当時の新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象品目です。 同加算は令和8年度改定で革新的新薬薬価維持制度(PMP)に改組されており、 現在この位置にあたるのはPMPの対象品目です(名前と仕組みは変わりましたが、 特許期間中の新薬の薬価を維持する枠という役割は引き継がれています)。 「新創品以外の先発品」には、加算の対象外の新薬のほか、特許が切れても後発品が出ていない古い先発品も含まれます。
出典:中医協 薬-3「令和7年度薬価改定について③〜論点整理〜」(令和6年12月4日)参考資料 「薬剤費に及ぼす薬価改定等の影響分析」のうち「薬剤費の構成割合の推移」。

9.91兆円と11.2兆円の違い

このページには9.91兆円(薬剤費)と約11.2兆円(薬価調査の年換算)という2つの総額が出てきます。数え方が違います。

A 薬剤費 9.91兆円(レセプトから数える)

国民医療費46.70兆円に、診療報酬の請求データから出した薬剤費比率21.2%を掛けた推計値です。 患者に使われて請求された薬剤料を積み上げる考え方のため、 DPCなど薬剤費が包括して算定される入院分は含まれません。令和4年度の値。

B 薬価調査の年換算 約11.2兆円(取引から数える)

卸から医療機関・薬局に販売された9月1か月分の数量に薬価を掛け、12倍して年額に直した金額です。 納入された薬をすべて数えるため、DPCの包括分に使われた薬も入ります。 一方で、1か月分を12倍しただけなので、月ごとの偏りは残ります。2023年9月の値。

つまりBのほうが範囲が広く、時点も違います。上の構成比はBに基づくもので、薬剤費9.91兆円をそのまま割った内訳ではありません。 ただしBは、このページの乖離率と同じ薬価調査から作られているので、乖離率と組み合わせて読むにはこちらが向いています。

平均乖離率が小さいのは、重みの置きどころによる

この構成比は、前節の平均乖離率と直結します。同じ2023年(令和5年度)の乖離率は、 新薬が4.2%、長期収載品が10.4%、後発品が11.0%、その他が3.2%でした(次節)。 これに金額の割合(64%・13%・16%・6%)を重みとして掛けて足すと約6.0%。この年の平均乖離率がそのまま出てきます。 乖離率の大きい特許切れ市場は金額では3割しかなく、乖離率の小さい新薬が3分の2近くを占めるので、 平均は小さな値に収まるのです。

しかもこの重みは動き続けています。特許切れ市場(長期収載品+後発品)のなかで後発品が占める金額の割合は、 2017年9月の4割(1.4÷3.5兆円)から、2023年9月には5割台半ば(1.8÷3.3兆円)へ上がりました。 薬価調査の後発品の金額シェアも、令和5年度56.7%、令和6年度62.1%、令和7年度68.7%と上がり続けています。 後発品は長期収載品より薬価が低いため、置換えが進むほど特許切れ市場の金額そのものが縮み、 薬剤費に占める新薬の比重はさらに上がっていきます。

製品カテゴリー別に見ると、平均値は3つの塊を均している

製品カテゴリー別:長期収載品だけが横ばいのまま

全体平均の4.8%は、性質のまったく違う品目群を混ぜた結果です。分野別に分けて平成29年度からの動きを追うと、 平均が9.1%から4.8%へ縮んだ中身が見えてきます。後発品は17.7%(推計)から8.7%へ半減し、 新薬(後発品のない先発品)も6.9%(推計)から3.6%へ下がりました。 ところが長期収載品だけは、おおむね10%前後で横ばいのままです。

その結果、令和6年度には長期収載品(9.5%)が後発品(9.4%)をわずかに上回り、 令和7年度には9.6%対8.7%と差が開きました。値引きの中心が、後発品から長期収載品へ移ったということです。 販売先別に見ると、病院ではこの逆転がすでに令和5年度に起きていました (全カテゴリーの合計乖離率を100とした指数で、長期収載品196、後発品187)。

分野別の乖離率の推移

単位:%/平成29〜令和4年度は流通改善懇談会の乖離指数からの推計、令和5〜7年度は薬価調査の公表値

  • 新薬(後発品のない先発品)
  • 長期収載品(後発品のある先発品)
  • 後発品
20% 15% 10% 5% 0% ← 指数からの推計 公表値 → 新薬 平成29年度:6.9%(推計) 新薬 平成30年度:5.4%(推計) 新薬 令和元年度:5.8%(推計) 新薬 令和2年度:5.8%(推計) 新薬 令和3年度:5.5%(推計) 新薬 令和4年度:5.0%(推計) 新薬 令和5年度:4.2%(公表値) 新薬 令和6年度:3.8%(公表値) 新薬 令和7年度:3.6%(公表値) 長期収載品 平成29年度:9.9%(推計) 長期収載品 平成30年度:8.3%(推計) 長期収載品 令和元年度:9.9%(推計) 長期収載品 令和2年度:10.4%(推計) 長期収載品 令和3年度:10.6%(推計) 長期収載品 令和4年度:10.1%(推計) 長期収載品 令和5年度:10.4%(公表値) 長期収載品 令和6年度:9.5%(公表値) 長期収載品 令和7年度:9.6%(公表値) 後発品 平成29年度:17.7%(推計) 後発品 平成30年度:14.2%(推計) 後発品 令和元年度:16.2%(推計) 後発品 令和2年度:15.0%(推計) 後発品 令和3年度:13.8%(推計) 後発品 令和4年度:13.0%(推計) 後発品 令和5年度:11.0%(公表値) 後発品 令和6年度:9.4%(公表値) 後発品 令和7年度:8.7%(公表値) 17.7 9.9 6.9 令和6年度に逆転 長期収載品 9.6 後発品 8.7 平均 4.8 新薬 3.6 H29 H30 R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 20% 15% 10% 5% 0% ← 推計 公表値 → R6に逆転 長期収載品 9.6 後発品 8.7 平均 4.8 新薬 3.6 H29 H30 R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7
数値を表で見る
分野別の乖離率の推移
調査年度新薬長期収載品後発品値の種類
平成29年度6.9%9.9%17.7%推計
平成30年度5.4%8.3%14.2%推計
令和元年度5.8%9.9%16.2%推計
令和2年度5.8%10.4%15.0%推計
令和3年度5.5%10.6%13.8%推計
令和4年度5.0%10.1%13.0%推計
令和5年度4.2%10.4%11.0%公表値
令和6年度3.8%9.5%9.4%公表値
令和7年度3.6%9.6%8.7%公表値
分野別の乖離率の推移(その他の品目・平均)
調査年度その他の品目平均値の種類
平成29年度5.8%9.1%推計
平成30年度3.7%7.2%推計
令和元年度4.7%8.0%推計
令和2年度4.1%8.0%推計
令和3年度3.9%7.6%推計
令和4年度3.9%7.0%推計
令和5年度3.2%6.0%公表値
令和6年度2.6%5.2%公表値
令和7年度1.9%4.8%公表値
推計の元にした乖離指数(全販売先、全カテゴリーの合計乖離率=100)
調査年新薬長期収載品後発品その他の医薬品
20177610919464
20187511519751
20197312420359
20207213018751
20217213918151
20227214418656
20237117418453

平成29〜令和4年度は、流通改善懇談会(第37回、令和6年5月20日)資料1 別添3 が示す 「全カテゴリーの合計乖離率を100とした乖離指数」(全販売先)に、各年度の平均乖離率を掛けて求めた推計値です。 指数は整数で、平均乖離率は小数第1位で示されているため、推計値には丸めの幅があります(新薬で±0.1ポイント弱、後発品では最大±0.14ポイント程度)。 令和5〜7年度は、厚生労働省「医薬品価格調査 結果の概要」の分野別乖離率(公表値)です。 令和5年度は推計値と公表値がほぼ一致します(新薬 4.3/4.2、長期収載品 10.4/10.4、後発品 11.0/11.0)。
新薬は薬価調査の「先発医薬品(後発医薬品なし)」、長期収載品は「先発医薬品(後発医薬品あり)」にあたります。 後発品のない先発品には、特許が切れても後発品が出ていない古い先発品も含まれます。

投与形態別:歯科用薬剤だけが逆方向に動いている

内用薬と注射薬は縮小し、外用薬は令和4年度の8.0%をピークに平成30年度並みへ戻りました。 歯科用薬剤だけは一貫してマイナス(薬価を上回る価格での取引)で、その幅が近年急速に広がっています。 低薬価品が多く、薬価が実勢のコストに追いついていない領域であることを示唆します。

投与形態別の乖離率の推移

単位:%

  • 内用薬
  • 注射薬
  • 外用薬
  • 歯科用薬剤
12 8 4 0 −4 −8 −12 内用薬 平成30年度:8.2% 内用薬 令和元年度:9.2% 内用薬 令和2年度:9.2% 内用薬 令和3年度:8.8% 内用薬 令和4年度:8.2% 内用薬 令和5年度:7.0% 内用薬 令和6年度:6.4% 内用薬 令和7年度:5.8% 注射薬 平成30年度:5.2% 注射薬 令和元年度:6.0% 注射薬 令和2年度:5.9% 注射薬 令和3年度:5.6% 注射薬 令和4年度:5.0% 注射薬 令和5年度:4.4% 注射薬 令和6年度:3.5% 注射薬 令和7年度:3.2% 外用薬 平成30年度:6.6% 外用薬 令和元年度:7.7% 外用薬 令和2年度:7.9% 外用薬 令和3年度:7.9% 外用薬 令和4年度:8.0% 外用薬 令和5年度:7.2% 外用薬 令和6年度:6.8% 外用薬 令和7年度:6.8% 歯科用薬剤 平成30年度:−5.7% 歯科用薬剤 令和元年度:−4.6% 歯科用薬剤 令和2年度:−0.3% 歯科用薬剤 令和3年度:−2.4% 歯科用薬剤 令和4年度:−4.3% 歯科用薬剤 令和5年度:−5.6% 歯科用薬剤 令和6年度:−9.3% 歯科用薬剤 令和7年度:−9.5% 外用薬 6.8 内用薬 5.8 注射薬 3.2 歯科用 −9.5 H30 R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7 12 8 4 0 −4 −8 −12 内用薬 5.8 注射薬 3.2 外用薬 6.8 歯科用 −9.5 H30 R1 R2 R3 R4 R5 R6 R7
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投与形態別の乖離率
調査年度内用薬注射薬外用薬歯科用薬剤
H308.2%5.2%6.6%−5.7%
R19.2%6.0%7.7%−4.6%
R29.2%5.9%7.9%−0.3%
R38.8%5.6%7.9%−2.4%
R48.2%5.0%8.0%−4.3%
R57.0%4.4%7.2%−5.6%
R66.4%3.5%6.8%−9.3%
R75.8%3.2%6.8%−9.5%

後発品への置換えは数量ベースで9割に迫る

後発医薬品のシェア
区分令和5年度令和6年度令和7年度
数量シェア80.2%85.0%88.8%
金額シェア56.7%62.1%68.7%

※ 数量シェア=後発品の数量 ÷(後発品のある先発品の数量+後発品の数量)

下支えを受けたカテゴリーは、乖離率が目に見えて縮む

基礎的医薬品安定確保医薬品A・不採算品再算定品は、流通改善ガイドラインの令和6年3月改訂で、 価格交渉の段階から別枠とされ、単品単価交渉とすることになりました(実勢価改定:流通改善と価格交渉のカテゴリー)。

別枠の3分野と最低薬価品目の乖離率
分野令和5年度令和6年度令和7年度変化(pt)
基礎的医薬品1.8%1.6%1.6%▲0.2
安定確保医薬品A5.8%3.5%3.0%▲2.8
不採算品再算定品3.3%2.1%1.6%▲1.7
最低薬価品目12.4%12.1%7.3%▲5.1
(参考)全品目の平均6.0%5.2%4.8%▲1.2

令和8年度の通知に使われた数字

最低薬価品目の令和6・7年度の値は、令和8年度の薬価算定基準の経過措置で 「みなし最低薬価品目群平均乖離率が7.3%を超え、かつ当該品目の乖離率が12.1%を超えるもの」という条件の閾値にそのまま使われています(薬価の下支え措置:最低薬価)。

不採算品再算定:全品対象から、絞り込みへ

薬価が下がりすぎて製造販売の継続が困難になった品目を、原価計算方式で引き上げる仕組みです。 令和5年度に企業希望の全品を対象とする臨時・特例的な運用が始まり、告示数は前回(令和4年度)の440から1,081へ膨らみました (中医協 薬-1-参考、令和7年1月15日、12ページ)。 その後は年ごとに絞り込まれ、令和8年度は3類型に限ったうえで「原価等が著しく上昇した」ことが要件に加わりました。

恒久ルールの要件、令和5〜8年度の対象品目と乖離率の基準の変遷、令和5・6年度の適用規模(品目数・成分数・告示数)は、制度解説の側にまとめました。

→ 薬価の下支え措置:不採算品再算定

新薬創出等加算からPMPへ:16年の変遷

特許期間中の新薬の薬価を維持する仕組みは、2010年度の試行導入から16年で、 「加算を上乗せする制度」から「そもそも下げない制度」へ変わりました。

  1. 2010 / H22

    試行的導入

    ドラッグ・ラグの解消と革新的新薬の創出を促すため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算として導入。 対象は、収載後15年以内で後発品が収載されておらず、乖離率が全品目の平均を超えない新薬。 企業側には未承認薬・適応外薬の開発要請への対応が求められ、 後発品収載時等にそれまでの加算の累積額を控除する仕組みも当初からありました。

  2. 2012 – 2016

    試行の継続

    改定のたびに延長。対象品目の広さと財政影響をめぐる議論が続きました。

  3. 2018 / H30

    抜本改革で制度化、同時に対象を大幅に絞込み

    品目要件(画期性加算・有用性加算の対象、希少疾病用医薬品、開発公募品、新規作用機序医薬品で一定の要件を満たすもの 等)で対象を絞り込み、 企業要件として企業指標による区分を導入しました。

    2018年度に導入された企業区分と加算係数
    区分範囲加算係数企業数
    区分Ⅰポイント上位25%1.023社
    区分Ⅱ区分Ⅰ・Ⅲ以外0.954社
    区分Ⅲ最低点数0.86社

    企業ポイントは、①国内試験(国際共同試験を含む)の実施数 ②過去5年間の新薬収載実績 ③開発公募品の開発着手数 ④開発公募品の承認取得数 ⑤世界に先駆けた新薬の開発品目数 で算出されました。

  4. 2020 – 2022

    企業指標の見直し

    企業指標の項目と重み付けが改定のたびに調整されました。令和4年度改定では、区分間の企業数のバランスを考えて区分Ⅲの範囲が「最低点数」(当時0pt)から「2pt以下」に広げられ、 区分Ⅲの企業は8社から21社に増えました。企業の属性で品目の価格が変わることへの批判が強まっていきます。

  5. 2023 / R5

    中間年改定で加算額を臨時・特例的に増額

    イノベーションに配慮して加算額を増やし、薬価を従前と遜色ない水準にしました。 同じ改定で不採算品再算定を全品対象にしたのと対をなし、革新性と供給の両方を守る措置でした。

  6. 2024 / R6

    企業区分・加算係数を廃止し、企業要件は除外方式に

    企業指標に基づく企業区分と加算係数による加算額の調整は廃止されました。 革新性は品目要件で評価すれば開発の誘因になり、企業指標は企業の規模に左右されてベンチャーやスタートアップ企業では高いポイントを得にくいためです。 加算額は改定前薬価を維持する額に改められました(平均乖離率を超える品目は加算なし)。 企業要件は残り、開発要請に適切に対応しなかった企業に加えて、別表11の確認事項(国内試験の実施数、新薬収載実績、開発公募品、先駆的医薬品の指定数 等)に 過去5年間ひとつも該当しない企業を対象から外す除外方式が設けられました(新薬の収載時にその新薬のほかに対象品目を持たない企業は、収載時点では対象企業として扱う)。

  7. 2026 / R8

    革新的新薬薬価維持制度(PMP)へ改組

    要件を満たす品目は実勢価改定を適用せず改定前薬価に据え置く形になりました。 「薬価維持期間」が明文化され、後発品の収載や収載から15年の経過などで維持期間が終わると、累積額が一括控除されます(PMP:薬価維持期間の終了)。 企業要件は令和6年度の除外方式を引き継ぎ、別表11が別表10になりました(PMP:対象企業の要件)。

累積額は制度をまたいで引き継がれる

令和8年度基準の経過措置により、平成22〜令和6年度の各基準による新薬創出等加算の加算額はPMPの累積額に引き継がれます(PMP:累積額の控除)。

長期収載品:4つの類型から、1本の階段へ

特許が切れた先発品を後発品の価格へ寄せていく仕組みは、令和8年度基準で組み替えられました。

令和7年度基準までと令和8年度基準
項目令和7年度基準まで令和8年度基準
類型 Z2・G1・G2・C の4つ G1の1つ
対象になる時期 後発品価格への引下げ(G1・G2)は後発品収載後10年から
5〜10年は、置換え率80%未満の品目にZ2(一定率の引下げ)。置換え率80%以上が改めて確認された品目は、10年を待たずにG1
G1は後発品収載後5年から
置換え率80%以上が改めて確認された品目は、5年を待たずにG1
引下げの下支え C区分
Z2と同じ率(置換え率60%未満なら2%、60%以上80%未満なら1.75%)
補完的引下げ
置換え率による区分をやめ、一律2.0%

「低い方を採る」だけが生き残った

旧ルールでは、G1・G2による引下げ後の薬価とCによる引下げ後の薬価の低い方を採っていました。 令和8年度基準でCは廃止されましたが、この「低い方を採る」仕組みは補完的引下げとして残りました。 引下げ率が置換え率によらず一律2.0%になった背景には、後発品の数量シェアが9割に迫り、置換え率で差をつける意味が薄れたことがあると考えられます。

→ 長期収載品:G1ルールと補完的引下げ

ルールは実際にどれだけ使われてきたか

再算定の適用実績

※ この項目は準備中です。再算定(市場拡大再算定・効能変化再算定・用法用量変化再算定など)について、 改定年ごとの適用品目数と引下げ額、特例の適用件数、四半期再算定の実績を載せる予定です。

改定時加算の適用実績

※ この項目は準備中です。改定時加算について、 改定年ごとの適用品目数と加算率の分布、どの加算がどれだけ使われたかを載せる予定です。

3つの流れが同じ方向を向いている

乖離率は痩せ続けている

値引きの余地が縮み、改定の焦点は「実勢価をどう拾うか」から「どこを守り、どこを落とすか」へ移りました。

下支えは絞り込まれている

不採算品再算定の特例は、令和5年度の全品対象から、令和7年度に対象品目を限り、令和8年度は3類型+原価上昇要件へと絞られました。後発品企業の評価には、対象品目を限る前の令和6年度基準から、再算定を受けた品目のその後5年間の乖離率が全ての既収載品の平均を超えると減点する項目があります(後発品企業の評価:4つの評価指標)。

革新の評価は特許期間に集中

特許期間中は薬価を据え置き、特許が切れたら累積額の一括控除とG1の前倒しで速やかに落とします。後発品の初収載価格も、その控除後の水準を基準に決まります(後発品の薬価算定:PMP累積額控除)。

このページの数値について

掲載した乖離率は、厚生労働省が公表した薬価調査(医薬品価格調査)の結果によります (分野別の平成29〜令和4年度は推計値)。 乖離率は次の式で算出され、値が大きいほど「薬価より安く取引されている」ことを意味します。

乖離率 = {Σ(薬価 × 販売数量) − Σ(実販売単価 × 販売数量)} ÷ Σ(薬価 × 販売数量)

年度表記は調査年度(当該年9月の取引分)で、その結果は翌年度の薬価改定に反映されます。

数値の取扱い

乖離率は速報値を含み、確定値や、その後の改定での実際の適用結果とは異なる場合があります。 制度の変遷の記述には報道・解説記事を参照して整理した部分があります。 正確な要件は各年度の「薬価算定の基準について」と中医協の配布資料をご確認ください。 誤りにお気づきの場合はお問い合わせページからお知らせください。

出典

本サイトの位置づけ

制度の全体像を理解するための教育・解説目的の資料です。 通知本文には数多くの例外・読替え・経過措置があり、本サイトはその主要部分を要約したものにすぎません。 実務上の判断にあたっては、必ず通知本文および別表、関連する事務連絡・Q&Aをご確認ください。