Section 05

長期収載品

特許が切れて後発品が発売された先発品を長期収載品と呼びます。これを価格と患者負担の両面から後発品に寄せていくのが長期収載品ルールの一貫した方向です。

長期収載品に働く3つの仕組み 階段が下るのがG1、階段と基準線に挟まれた面積が後発品との価格差、 そのうち後発品の最高価格より上の部分の半分(濃い部分)が選定療養で患者が負担する分、軸の下の帯がG1撤退です。 収載の巡り合わせと置換えの進み方を切り替えると、下がりはじめる時期が動きます。
X=
収載年
収載月
置換え
G1適用前の薬価 2.8倍
後発品の最高価格 1倍

後発品価格の何倍か

※ 段の倍率は後発品価格の加重平均値が基準で、引下げの下限になる後発品の最高価格はそれより上にあります。下限が1倍より上なら、最後の段は1倍まで下がりきりません。
※ X に西暦を入れたときだけ、令和8年度改定(2026年4月)に当たる段に激変緩和の①(下記)が効きます。②の円滑実施係数は企業単位で効くため、品目の図には入れていません。
※ 図はどの西暦でも令和8年度基準の段を当てはめます。2026年4月より前の改定は旧ルール(Z2・G1・G2・C。G1は後発品収載後10年が基本)だったため、2026年より前に当たる段は当時の制度とは異なります。
※ 図に描いていない1倍より下(後発品と同額の部分)も保険給付の対象です。
※ 選定療養の入口は収載から5年経過(置換え率1%未満を除く)または置換え率50%以上の早いほうで、いずれもバイオ医薬品は対象外です。対象品目リストは毎年4月(中間年改定の年も)更新されるため、本改定を待つG1より先に始まります。
※ 置換え率80%の確認のもとになる薬価調査は前年9月取引分です。「最速」は前倒しの要件とこの調査時期から出した計算上の下限で、実際にその速さで置換えが進むとはかぎりません。

G1の前倒しと選定療養の引上げが企業に与える影響は2026年度改革の要点、 特許が切れた先発品にどれだけ収益を残すかは現在の論点で扱っています。

G1ルール

長期収載品だけに適用される引下げルールです。 最初の後発品の収載から遅くとも5年で G1 に該当し、そこから次の表のとおり段階的に引き下げられます。

令和8年度基準で、従来のZ2・G1・G2・Cの類型がG1に一本化され、 対象時期も後発品収載後10年から5年へ前倒しされました。 あわせて、これまでG1の対象外だったバイオ医薬品も、バイオシミラーが収載されたバイオ先行品にはG1が適用されます(後述の選定療養では、バイオ医薬品は対象外のままです)。

G1品目の引下げスケジュール
タイミング引下げ後の水準
G1に該当してから初めての薬価改定後発品価格の加重平均値の 2.5倍
G1該当から2年経過後の最初の改定同 2倍
G1該当から4年経過後の最初の改定同 1.5倍
G1該当から6年経過後の最初の改定同 1倍(後発品価格の加重平均値そのもの)

※ 表の「改定」は、これまでG1が適用されてきた2年に1度の本改定を指します。中間年改定(令和3・5・7年度)では適用されておらず、令和9年度(中間年)改定でどのルールを適用するかは今後の検討事項です。 置換えが進まなければ、収載から5年で該当し、その後の最初の本改定から下がりはじめるので、後発品収載から通算11〜13年ほど(図の既定では11年10か月)で価格差が消える計算です。
※ 1回目の改定で置換え率80%以上、2回目の改定で改めて80%以上が確認されれば、 5年を待たず、最速で3年目(収載の時期によっては4〜5年目)に該当し、最速で9年目に後発品と同水準に達します。

補完的引下げ(一律2.0%)

表の額は「後発品価格の何倍か」で決まるため、後発品の価格水準によっては、 今の薬価とほとんど変わらないか、上回ることがあります。 そのため、 改定後の薬価 = 表の額 と(適用前価格 × 98/100)の低い方 として改定します。これが補完的引下げで、どの段階でも最低2.0%は下がります。

※ 補完的引下げでも、引下げの下限(改定後の後発品価格のうち最も高い額)は割り込めません。

令和8年度改定に限った激変緩和

G1の前倒しは企業の収益に大きく影響するため、2つの緩和措置が置かれています。
① 引下げ率が50%を超える品目は、50%を上限とする。
② 長期収載品ルールの適用による影響率(自社の医療用医薬品総売上に対する減収見込みの割合)が5%を超える企業には、 円滑実施係数 =(影響率 × 0.5 + 2.5%)÷ 影響率 を引下げ率に乗じて緩和する。

※ ②は長期収載品への依存度が高い企業ほど緩和が大きく効きます。 いずれも常設の規定としては廃止され、大きな制度変更に配慮して令和8年度改定に限り適用される経過措置です。

G1の対象になる品目・ならない品目

対象になる

  • 昭和42年10月1日以降に承認された先発品で、最初の後発品の収載後5年を経過したもの
  • 5年未満でも、過去の改定で後発品置換え率80%以上だった実績があり、改めて80%以上が確認されたもの
    実績に数えるのは本改定だけ(令和5年度・令和7年度の中間年改定は除く)

除外される

  • 日本薬局方収載医薬品
    ただし品目ごと(銘柄別)に薬価収載されているものは対象になりうる
  • 生物学的製剤基準収載医薬品(血液製剤を含む)
  • 漢方製剤・生薬
  • 希少疾病以外の効能を持たない希少疾病用医薬品
  • 基礎的医薬品・不採算品再算定・最低薬価という低薬価品の特例に該当するもの
  • すでに後発品価格の最低額を下回っているもの
  • すでに1倍まで下がったことのある品目
    階段が1倍で止まるのはこの規定による

※ 除外のうち低薬価品の特例(基礎的医薬品・不採算品再算定・最低薬価)に該当するものは、薬価の下支え措置そのものです。採算ぎりぎりまで下がった品目を さらに下げると供給が途絶えるため、下げるルールと下支えるルールが衝突したときは下支えが優先します。

G1撤退ルール

G1品目には、価格の引下げとは別に、 製造販売業者が市場から撤退する(供給を停止する)手続が用意されています。 価格が後発品と同水準まで下がるのなら、先発品を作り続ける意味は薄れます。

「下げる」と「抜ける」を対にし、穴を埋めた企業を加点する

列は誰が動くか、番号は順番です。

  1. 先発品企業G1で薬価が後発品の水準へ下がりはじめる2年ごとに後発品価格の2.5倍→2倍→1.5倍→1倍
  2. 先発品企業供給停止(市場撤退)の手続をとる平成31年3月29日の事務連絡による
  3. 厚生労働省後発品企業に増産を依頼する
  4. 後発品企業承認を承継する、または自社品目を増産する
  5. 後発品企業G1増産対応企業に決まる
  6. 後発品企業企業評価で1品目ごとに+5pt別表11 3⑥。上限の定めはない
根拠
撤退の手続は薬価算定基準ではなく、平成31年3月29日付け 厚生労働省医政局経済課事務連絡「後発医薬品への置換えが進んでいる長期収載品(G1品目)の供給停止等に係る手続について」に定められています。G1で最初に引き下げられた後から使えます(周知の方法など、手続の細部は本サイトでは扱いません)。
抜けた穴を埋める仕組み
先発品が抜けた分を誰かが引き受けなければ、薬が患者に届きません。そこで上記の事務連絡に基づき、行政が後発品企業に増産を依頼します。依頼を受けた企業が「G1増産対応企業」です。
制度上の後押し
他社のG1品目の市場撤退に伴う製造販売承認の承継、または自社品目の増産でG1増産対応企業として決定した品目は、後発品企業の評価の加点対象です。この加点に上限はなく、上限20ptが付くのは他社の出荷停止品を増産した場合の加点のほうです。同じ評価で品目統合を減点から外す規定は再編を後押しする4つの規定にあります。

出典:令和8年度薬価算定基準 別表11(3⑥および同注記)、中医協 薬価専門部会 資料(2019年9月25日)

長期収載品の選定療養

薬価は動かさず、患者負担の側から後発品使用を促す仕組みです。 後発品があるのに患者の希望で長期収載品を選ぶ場合、後発品との価格差の半分が保険給付から外れ、 患者が「特別の料金」として自己負担します。 G1は保険財政と価格の仕組みで、患者の選択と無関係に薬価そのものを下げます。 根拠も決め方も別で、G1は中医協で決める薬価算定基準、選定療養は保険給付の範囲(保険外併用療養費)の制度です。

現行ルール(2026年6月〜)
項目内容
対象となる長期収載品 最初の後発品の収載月の翌月初日から5年を経過したもの(置換え率1%未満を除く)、または5年未満で後発品の置換え率が50%以上となったもの
いずれもバイオ医薬品を除き、長期収載品の薬価が後発品の最高価格を超えるものに限る
患者が負担する特別の料金 長期収載品と後発品の最高価格帯との価格差の 2分の1
残りの2分の1は引き続き保険給付の対象。特別の料金は保険外のため消費税の課税対象になります
適用されない場合 医療上の必要があると認められる場合(処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に印がある場合など)、保険医療機関または保険薬局で後発品の在庫状況等から提供することが困難な場合。入院中の患者も対象外

たとえば、価格差が100円の品目なら

長期収載品 300円/後発品の最高価格帯 200円 → 価格差は100円
このうち50円が保険給付から外れ、患者が特別の料金(+消費税)として負担します。 残りの250円分は通常どおり保険給付の対象となり、その自己負担割合分を窓口で支払います。

※ 2つの「50%」は別々の数字です。対象要件の「後発品置換え率50%以上」は入口の条件、 特別の料金の「価格差の2分の1」は負担の割合です。

2026年6月の変更点 — 負担が倍になった

導入時からの変更点
項目2024年10月〜(導入時)2026年6月〜(現行)
患者の特別の料金 価格差の 4分の1 価格差の 2分の1
対象となる長期収載品変更なし
適用されない場合変更なし

※ この引上げは、財務省が示す「OTC類似薬等の薬剤給付の在り方の見直し」4本柱の一つです(→ 保険で見る範囲)。 ほかの3本は、OTC類似薬を含めた薬剤自己負担の見直し(令和9年3月〜)、食品類似薬の保険給付の見直し(令和8年6月〜)、 長期処方・リフィル処方の推進で、4本で保険料負担▲1,000億円程度(令和8〜9年度)を見込みます。
出典:財政制度等審議会 財政制度分科会 資料(2026年4月28日)、厚生労働省「令和6年度薬価制度改革について」

本サイトの位置づけ

制度の全体像を理解するための教育・解説目的の資料です。 通知本文には数多くの例外・読替え・経過措置があり、本サイトはその主要部分を要約したものにすぎません。 実務上の判断にあたっては、必ず通知本文および別表、関連する事務連絡・Q&Aをご確認ください。