Section 08

再算定

実勢価改定が「実際いくらで売られているか」に基づくのに対し、 再算定は収載時に置いた前提が崩れたときに価格を見直す仕組みです。 想定を超えて売れたときは引き下げ、効能や用法・用量が変わったときは、それに見合う価格へ改めます(上がることもあります)。 複数に該当する場合は最も価格の低いものが適用されます。

市場拡大再算定と持続可能性特例価格調整(SPA-SSS)

市場拡大再算定は、原価計算方式で算定された品目か、収載後に使用実態が著しく変わった品目に限られ(第3章第5節1(1)イ)、SPA-SSSにはこの限定がありません。どちらも、収載日(効能変更等があればその承認日)から10年経過後の最初の薬価改定(令和7年度改定を除く)を受けていない品目が対象です。

どれだけ売れたら、どの再算定の対象になるか

横は年間販売額、縦は基準年間販売額の何倍になったか。目盛りは要件の境目だけで、長さは金額や倍率に比例しません。区域の中の大きな数字は改定前薬価からの引下げ幅の上限で、率が大きいほど大きな字です。

100億 150億 1,000億 1,500億 3,000億 1倍 1.3倍 1.5倍 2倍 10倍 年間販売額(円) → ↑ 倍率 市場拡大再算定 150億円超・2倍以上 15% 原価計算方式以外 25% 原価計算方式 原価計算 方式のみ 10倍以上 25% SPA-SSS 1.5倍以上 25% SPA-SSS 1.3倍以上 50% 10倍以上 ※ 67% 市場拡大再算定と SPA-SSSの両方の対象。 低いほうの価格を適用 100億 150億 1,000億 1,500億 3,000億 1倍 1.3倍 1.5倍 2倍 10倍 年間販売額(円) → ↑ 倍率 市場拡大 再算定 150億円超 2倍以上 15% 原価計算 方式以外 25% 原価計算 方式 原価計算 方式のみ 10倍以上 25% SPA-SSS 1.5倍以上 25% SPA-SSS 1.3倍以上 50% 10倍以上 67% 市場拡大 再算定と SPA-SSSの 両方の対象。 低いほうの 価格を適用

※ 67%は、収載時に1,500億円超と見込まれた品目とその薬理作用類似薬に限ります(下の表の最下行)。それ以外は50%です。

要件と引下げの上限
年間販売額倍率上限
市場拡大再算定
150億円超 2倍以上 15%
原価計算方式の品目は25%
100億円超
原価計算方式の品目に限る
10倍以上 25%
持続可能性特例価格調整(SPA-SSS)
1,000億円超1,500億円以下 1.5倍以上 25%
1,500億円超 1.3倍以上 50%
3,000億円超
収載時に1,500億円超と見込まれた品目とその薬理作用類似薬に限る
10倍以上 67%
改定前薬価の3分の1まで

※ 倍率(市場規模拡大率)=年間販売額÷基準年間販売額。基準年間販売額は原則、収載時に企業が示した予想年間販売額で、前回の改定以前に市場拡大再算定または効能追加に伴う大幅な用法用量変更による用法用量変化再算定を受けた品目では、直近のその再算定時点の年間販売額。収載から10年経過後の最初の改定より後に効能変更等があった品目では、その承認日の直前の改定時点の年間販売額。
※ SPA-SSS=Special Price Adjustment for Sustainable Health System and Sales Scale。
※ 引下げ幅は倍率に応じて0.9を累乗する算式で決まり、表の上限はその頭打ちです(算式は計算方法)。

効能変化再算定

効能変化再算定:適用される場合と価格の決め方
区分適用される場合価格の決め方
原則 主たる効能・効果が変わり、変更後の効能に類似薬(新薬として収載されたもの)がある 従前の効能の一日薬価と、変更後の効能の最類似薬の一日薬価を、それぞれの効能の市場規模(薬理作用類似薬の年間販売額)で加重平均した水準に改める。上下どちらもある
特例 変更後の効能に薬理作用類似薬がなく、次のすべてを満たす
・一日薬価が参照薬の10倍以上
・参照薬の年間販売額が150億円以上
・対象患者が最大10倍以上に広がり、最大5万人以上
参照薬の一日薬価と、市場規模で加重平均した水準に改める。下がる場合だけ適用
根治的治療法の効能や、重篤疾患・指定難病・血友病・抗HIVの効能を追加した品目は対象外

※ 効能変化再算定を受けた品目と同じ組成・剤形区分・製造販売業者の非汎用規格や、同様の効能変更等があった組成・投与形態が同じ類似薬も、同じ割合で改めます(第3章第5節2(3))。
※ 算式は計算方法の効能変化再算定(別表7)にあります。

用法用量変化再算定

用法用量変化再算定:適用される場合と価格の決め方
区分適用される場合価格の決め方
原則 主たる効能に係る用法・用量が変わった
効能追加に伴う大幅な変更は、年間販売額100億円超かつ、効能変更等の承認日の直前の薬価改定時点の年間販売額の10倍以上のときだけ
一日通常最大単位数量の変化の比を掛け、一日薬価が変わらないように改める
特例 保険適用上の投与期間や、対象患者の範囲が変わった 投与期間×推計患者数の変化の比(使用量変化率)を掛ける。改定前薬価の75%が下限

※ 算式は計算方法の用法用量変化再算定(別表8)にあります。

改定を待たない再算定(年4回)

ここまでの再算定は原則として薬価改定のときに行いますが、 次の4種類の品目は、年4回の機会でも市場拡大再算定・SPA-SSS・用法用量変化再算定の要件を満たせば薬価を改めます(第3章第5節4)。 効能変化再算定も、変更前の年間販売額が350億円超の品目は年4回の対象です。

年4回の再算定の対象(第3章第5節4(1))
対象市場拡大再算定の要件
① 効能変更等、または主たる効能・効果に係る用法・用量の変更が承認された品目販売額の基準が350億円超に上がる(通常の150億円・100億円を読み替え。倍率の要件は通常どおり)
② 収載時に、2年度目の販売額が100億円以上(原価計算方式)または150億円以上と見込まれた品目①と同じ
③ 収載時に1,500億円超と見込まれた品目と、その薬理作用類似薬 R8新設①と同じ
④ 市場拡大再算定・SPA-SSSを受けた品目の薬理作用類似薬(新薬として収載され、後発品がないもの) R8新設通常どおり150億円超かつ基準年間販売額の2倍以上など。収載時の算定方式を問わない

④は、共連れの廃止と対になる規定です。 類似薬効比較方式で値が付き、使い方も変わっていない類似薬は、ふつうは市場拡大再算定の対象外です。 共連れをなくすだけでは、こうした品目は販売額が大きく伸びても再算定の網から外れるため、④は算定方式や使用実態による限定を外しました。 共連れで下がっていた薬理作用類似薬は、自らの販売額が伸びたときだけ、年4回の機会に下がります。

※ ④は、令和8年度改定以降に再算定を受けた品目の類似薬に適用されます。中医協があらかじめ特定した領域の品目は、共連れのときと同じく対象外です(第4章1(7))。

判定に使う数量は、どこから来るのか

年間販売額は、薬価に販売数量を掛けた額です。数量の把握方法は算定基準にありませんが、 中医協の資料では、改定のときは9月の薬価調査、年4回の機会では効能追加等があった品目の市場規模を NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)で把握するとしています。 令和8年度改革の骨子では、③と④の品目も、効能追加等の有無にかかわらずNDBで使用量を把握するとしました。

NDBを使う回は、診療月の3か月後にデータを抽出し、薬価算定組織の検討と中医協の了承・告示を経て、 診療月の8か月後に施行します(12月診療分なら3月抽出、5月告示、8月施行)。 レセプトがデータベースに入るまでに3〜4か月かかるので、抽出はその直後です。

※ 感染症治療薬(ゾコーバ)では、年間市場規模が1,000億円を超える場合のルール(当時の市場拡大再算定の特例、現在のSPA-SSS)の判定について、 市場規模を迅速につかむため、薬価調査やNDBに代えて患者発生状況・投与割合・出荷量等の代替指標から年間販売額を推計するとされました。 逆に認知症薬(レケンビ・ケサンラ)では、四半期での速やかな判断のため、算定方式や2年度目の販売予想額にかかわらずNDBで把握するとされています。
※ 出典:中医協 薬価専門部会「令和8年度薬価改定について⑤」(薬-1、令和7年11月19日)、 同資料に再掲された「四半期再算定のスケジュール(イメージ)」(薬-1、令和5年7月26日)、令和8年度薬価制度改革の骨子。

令和8年度改革での変更

共連れの廃止

従来は、市場拡大再算定の対象品目の類似品(薬理作用類似薬と、組成が同一の既収載品)も、改定のとき自らの販売額と関係なく一緒に引き下げられていました(共連れ)。 廃止で外れたのは、組成の違う薬理作用類似薬と、組成は同じでも投与形態の違う品目(内用薬と注射薬など)です。 組成の違う薬理作用類似薬には、代わりに年4回の再算定の④がかかります。 投与形態の違う品目は薬理作用類似薬に当たらないため(第1章17)、④の対象にもならず、自らの販売額が要件を満たしたときだけ再算定されます。 判定に使う年間販売額は、いまも組成と投与形態が同一の類似薬(他社の併売品を含む)の合計額です(基準では「同一組成既収載品群」と呼びます)。

SPA-SSSへの改称と上限の引上げ

従来の「市場拡大再算定の特例」を改称したものです。イノベーションの評価と国民皆保険の維持を両立するための対応だという趣旨を、名前で明確にしました。 あわせて、上限67%の区分を加えました。 両立のさせ方をめぐる議論は、現在の論点で扱っています。

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