Section 12
後発品企業の評価
薬価制度は本来、品目に値段を付ける仕組みです。ところが供給不安の背景にある少量多品目構造は、 個々の品目の価格をいじっても動きません。そこで後発品では、企業そのものを採点し、その結果を品目の価格に反映させる規定が置かれました。 令和6年度基準で試行的に導入され、令和8年度基準で効き方が強まっています。
評価は何に効くのか
評価そのものは薬価を上げ下げしません。効き先は1つ、A区分の企業の品目が後発品の価格帯集約(最高価格の30%以上の価格帯)から外れ、自社の価格を保てることです。 集約では価格を維持してきた企業ほど引き下げられます。→ 価格帯の集約
A区分でも集約される場合
A区分の企業でも、品目ごとに次のいずれかに当たれば集約されます(第3章第7節1(1)イ)。
(イ)その品目の乖離率が、全ての既収載後発品の平均乖離率を超える場合
(ロ)集約した場合に、同一組成・剤形区分・規格の後発品のうち最も高い価格帯にならない場合
(ハ)自らの原因により、その品目の供給に支障が生じている場合
(イ)〜(ハ)を当てはめるのは、その組成・剤形区分に後発品が初めて収載されてから5年を経た品目に限られ、 重要供給確保医薬品は除かれます。
また、企業の区分や収載からの年数にかかわらず、組成・剤形区分・規格が同一の類似薬(先発品を含む)のうち 最も高い価格の30%を下回る品目は、既収載品群の価格帯に集約されます(第3章第7節2イ)。
4つの評価指標
企業指標は4分野・全18項目で、そのポイントの合計が企業指標に基づくポイントです。
加点で伸ばすより、減点で振るい落とす
分野ごとの、加点しうる幅と減点しうる幅。上限の定めがある項目の合計は、加点+55pt、減点▲92ptです。
「+」は上限の定めがない項目(分野3⑥、分野4③④)がさらに乗る印です。
分野1 後発品の安定供給に関連する情報の公表等
情報が出てこないこと自体が医療現場の混乱を招くという反省から、主に公表の有無を見る分野です。 ただし⑤では、安定供給体制の自主点検を実施したか、その結果が不適でないかも点数に入ります。
| # | 評価項目 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 製造販売する品目の製造業者名の公表 | 様式1に記載していない場合 ▲5pt |
| ② | 製造販売する品目の原薬の製造国の公表 | 様式1に記載していない場合 ▲5pt |
| ③ | 共同開発して承認された品目の共同開発先の製造販売業者名の公表 | 様式1に記載していない場合 ▲5pt |
| ④ | 厚生労働省ウェブサイトの情報提供ページへの安定供給体制等に関する情報の掲載 | 様式2を公表していない場合 ▲10pt |
| ⑤ | 「ジェネリック医薬品供給ガイドライン」に準拠した安定供給に係る文書の作成と運用 | 様式2について様式を公表していない場合 ▲5pt 安定供給体制の確保に関する自主点検の実施が確認できない場合 ▲3pt 自主点検を実施し不適の場合/未実施だが実施予定の場合/実施結果を記載していない場合 ▲2pt 不適だが是正措置を実施している場合 ▲1pt 該当するもののうち重い1つで、この項目の減点は最大▲5pt |
※ 様式1・様式2は「後発品の安定供給に関連する情報の公表等に関するガイドライン」の様式です。
分野2 後発品の安定供給のための予備対応力の確保
すぐには売上にならない備えを見る分野です。
| # | 評価項目 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 製造販売する品目の原薬の複数の製造所を確保 | 原薬の購買先を複数設定している品目の割合 10%未満 0pt/10〜30%未満 +3pt/30〜50%未満 +5pt/50〜100% +10pt |
| ② | 供給確保医薬品について、品目ごとの一定以上の余剰製造能力または在庫量の確保 | 製造余力指数がA・Bの品目の割合 70〜100% +5pt/50〜70%未満 +1pt/50%未満 0pt 在庫指数がA・Bの品目の割合 70〜100% +5pt/50〜70%未満 +1pt/50%未満 0pt |
※ 製造余力指数=向こう3か月以内に増産して供給できる量の指標(A:0.5以上、B:0〜0.5)。
※ 在庫指数=3か月分の標準的な在庫量を1としたときの在庫量の指標(A:1.5以上、B:1〜1.5)。
分野3 製造販売する後発品の供給実績
安定して供給できているか、売れない品目を抱え込んでいないかを見る、再編に直結する分野です。
| # | 評価項目 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 品目ごとの月単位の出荷実績(製造計画と実際の出荷量の比較を含む)の公表 | 製造計画を下回って供給する品目(実績指数0.8以下)の割合 0% 0pt/0〜30%未満 ▲1pt/30〜70%未満 ▲2pt/70〜100%未満 ▲3pt/100% ▲5pt |
| ② | 製造販売する供給確保医薬品の品目数 | 200品目以上 +10pt/100〜200未満 +8pt/50〜100未満 +5pt/10〜50未満 +3pt/1〜10未満 +1pt/0品目 0pt 供給確保医薬品のA群は、1品目を2品目に相当するものとして算出 |
| ③ | 製造販売業者自らの理由による出荷停止・出荷量の制限 | 出荷量制限品目の割合:20%以上 ▲5pt/10〜20%未満 ▲3pt/10%未満(0%を除く) ▲2pt/0% 0pt 出荷停止品目の割合:20%以上 ▲10pt/10〜20%未満 ▲7pt/10%未満(0%を除く) ▲5pt/0% 0pt |
| ④ | 出荷量が増加した品目・減少した品目の割合 | 増加:50%以上 +5pt/30〜50%未満 +4pt/20〜30%未満 +3pt/20%未満(0%を除く) +2pt/0% 0pt 減少:同じ刻みで ▲5pt/▲4pt/▲3pt/▲2pt/0pt |
| ⑤ | 他社が出荷停止・出荷量の制限を行った品目について、組成・剤形区分・規格が同一の自社品目の出荷量を増加させた実績 | 増産対応していると厚生労働省に報告のあった品目が、自社の品目数に占める割合の百分率の数値をそのまま加点(小数点以下四捨五入) ただし上限は+20pt |
| ⑥ | 他社の長期収載品のうちG1区分の品目の市場撤退に伴う製造販売承認の承継、または自社品目の出荷量を増加させた実績 | 組成・剤形区分が同一の品目について、G1増産対応企業として決定した品目ごとに+5pt 上限の定めはありません |
| ⑦ | 同一成分内でのシェアが3%以下の品目 | 同一成分・剤形区分・規格内でシェア3%以下の品目が、自社の全品目に占める割合 0% 0pt/0〜30%未満 ▲1pt/30〜50%未満 ▲3pt/50〜70%未満 ▲5pt/70%以上 ▲7pt |
※ ③④では、少量多品目構造の解消に資する品目統合により経過措置となったことが確認できた品目は、計算から除外されます。
※ G1増産対応企業とは、G1品目の供給停止手続のなかで行政から増産依頼を受けた企業です。→ G1撤退ルール
分野3の②と⑦の向きの違い
分野3②(供給確保医薬品、加点)と⑦(シェア3%以下の品目、減点)は向きが反対ですが、どちらも該当する品目を多く抱えるほど効きます。 分かれ目は、供給が途絶えては困る品目を引き受けているか、売れない品目を並べているだけかです。
分野4 薬価の乖離状況
値引き競争を主導する企業に高い評価を与えないため、自社品目の乖離率(①②④)と、収載から5年以内の早期撤退(③)を見る分野です。
| # | 評価項目 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | 自社の後発品全品目の平均乖離率が一定値を超えた実績 | 全ての既収載後発品の平均乖離率を100とした指数で評価 150未満 0pt/150〜200未満 ▲5pt/200〜250未満 ▲10pt/250以上 ▲15pt |
| ② | 収載5年以内の後発品の乖離率が一定値を超えた実績 | 同じ指数・同じ刻みで 0pt/▲5pt/▲10pt/▲15pt |
| ③ | 新規収載された後発品のうち、5年以内に市場撤退した品目数 | 収載から5年以内に供給停止事前報告書が提出された品目ごとに▲1pt 品目統合により経過措置となった品目は計算から除外。上限の定めはありません |
| ④ | 不採算品再算定を受けた品目について、その後5年間の乖離率が一定値を超えた実績 | 全ての既収載品の平均乖離率を超えた品目ごとに▲1pt。複数回超えた品目は、2回目以降さらに▲1pt 上限の定めはありません |
分野4①②の「指数」を実際の乖離率に直すと
令和7年薬価調査の後発品の平均乖離率8.7%(→ 過去の分析)を分野4①②の指数100として当てはめると、
指数150 = 乖離率およそ13.1% → ▲5pt
指数200 = 乖離率およそ17.4% → ▲10pt
指数250 = 乖離率およそ21.8% → ▲15pt
業界平均の1.5倍以上の値引きで減点が始まり、2.5倍以上でこの項目の下限(▲15pt)に達します。
指数は相対値なので、業界全体の乖離率が縮めば、減点が始まる実際の値引き幅も下がります。
分野4④の位置づけ
不採算品再算定で薬価が引き上げられたあとで再び大きく値引きして売るなら、引き上げる必要はなかったことになります。 分野4④はその行動を減点する項目で、令和6年度基準で置かれ、令和8年度基準まで文言は変わっていません。 不採算品再算定の対象が令和7・8年度と絞り込まれたのは、④が置かれたあとです。
A・B・Cの3区分
4分野の合計ポイントで、企業は3つに分けられます。
| 区分 | 範囲 |
|---|---|
| A | 企業指標ポイントの上位20パーセンタイル(同点企業を含めても全体の25%を超えない範囲) |
| B | A・C以外 |
| C | 合計ポイントが0pt未満 |
※ 直近1年間に医薬品医療機器等法違反に基づく行政処分の対象となった企業は、ポイント上はA区分に分類されてもB区分とみなされます。
A区分は相対評価、C区分は絶対基準で切られます。 業界全体の水準が上がれば、C区分は減りますが、A区分は数が増えず境界のポイントが上がるだけです。
全社が10pt改善しても、A区分は20社のまま
100社を合計ポイントの10pt刻みで数えた模式図。
- A区分(上位20%)
- B区分
- C区分(0pt未満)
企業数と分布の形は仮の値です。点数の分布は公表されていませんが、令和8年度改定の区分ごとの企業数は、 A区分38社・B区分64社・C区分83社と公表されています(厚生労働省「令和8年度薬価基準改定の概要」)。
再編を後押しする4つの規定
次の4つは、骨太の方針2026が掲げる「産業構造改革の推進による後発医薬品等の安定供給を図る」ことを価格面から後押しする規定です。
抱え込みへの減点
分野3 ⑦
売れない品目を並べているだけの状態にコストを課します。
品目統合は減点しない
分野3 ③④ / 分野4 ③
品目統合で経過措置となった品目を計算から外し、品目を減らしたこと自体は咎めません。
供給不安の肩代わりに加点
分野3 ⑤
日常の供給トラブルを引き受ける役回りです。
G1撤退の引受けに加点
分野3 ⑥
長期収載品の市場退出を受け止める役回りです。
品目統合が減点につながらない仕組み
従来は、品目を減らすと出荷停止・出荷量の減少・早期撤退として減点されるおそれがあり、少量多品目を解消したい企業ほど不利でした。 上の「品目統合は減点しない」(令和7年度基準から)は、品目統合で経過措置となった品目をこれらの計算(分野3③④、分野4③)から外します。 ただし、供給確保医薬品の品目数による加点(分野3②)に除外の定めはなく、手放した品目の分だけ加点が下がることがあります。 再編を動かすのは企業の資本政策で、薬価制度が用意できるのは誘因までです。→ 業界再編は進むのか